- 刑部 有祐 (おさかべ・ゆうすけ)
- 医学部 神経精神医学講座 助手
- 研究グループ
- 認知神経生理(CNP)チーム刑部有祐、志賀哲也、星野大、菅野和子、和田友紘、落合晴香、板垣俊太郎、三浦至、矢部博興
概要
論文掲載雑誌:「European Journal of Neuroscience」(2020年1月)
人間の脳は、本人が特に意識せずとも、周囲の音の変化を自動的に識別する能力を持っています。均一な音の中に珍しい音を混ぜた一連の音(たとえば一定のペースで鳴る同じ音の中に、まれに低い音が混ざるなど)を聞かせると、被験者が音に注意を払っていない状況であっても、珍しい音を聞かされてから100~250ミリ秒後にミスマッチ陰性電位(mismatch negativity, MMN)という脳波反応が引き起こされることが知られています。これは聴覚性感覚記憶を基盤とした、無意識的認知を反映する精神生理学的な反応と考えられています。またMMNは、統合失調症などいくつかの精神疾患における異常が注目され、簡便なバイオマーカーとしての臨床応用が期待されています。
一方で近年、音を聞いてから10~50ミリ秒後、つまりMMNよりも早くに発生する中間潜時反応(middle latency response, MLR)もまた、音の変化に対する無意識的認知を反映する可能性が指摘されています。しかしMMNが様々なタイプの音の変化(音の高さ、大きさ、長さなど)で引き起こされることが知られている一方、MLRに反映される変化の種類については十分に調べられていませんでした。私達は、MMNと精神疾患との関係で特に注目されている持続長変化(音の長さの変化)が、MLRにも影響を与えるかどうか調べました。
20名のボランティアに、長さ10ミリ秒の刺激音の中に、まれに長さ5ミリ秒の短い音が混ざる一連の音を聞かせました。そして、MMNが誘発されるかどうかと、MLRの頂点振幅が変化するかどうかを調べました。結果MMNは誘発されましたが、MLRの頂点振幅に、統計的に有意な変化はみられませんでした。
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