- 横川 哲朗 (よこかわ・てつろう)
- 医学部 循環器内科学講座 助教
- 研究グループ
- (福島県立医科大学循環器内科学講座)横川哲朗、三阪智史、君島勇輔、和田健斗、杉本浩一、石田隆史、竹石恭知 (福島県立医科大学輸血・移植免疫学講座)皆川敬治、池田和彦 (順天堂大学血液内科)森下総司、小松則夫
概要
論文掲載雑誌:欧州学術誌 Haematologica 2021,106(7):1910-1922
JAK2V617F変異はJAK2の恒常的活性化により、真性多血症などの骨髄増殖性疾患の原因遺伝子変異となる。JAK2V617F変異の存在が動静脈血栓症の発症リスクと関連することが知られているが、JAK2V617F変異と大動脈瘤の関連については不明である。本研究で、JAK2V617F変異骨髄増殖性疾患患者39名におけるCT所見を検討したところ、9名(23%)に大動脈瘤を認めた。次に、JAK2V617F変異骨髄細胞が大動脈瘤形成に与える意義を明らかにするため、JAK2V617F変異トランスジェニックマウスの骨髄細胞をApoEノックアウトマウスに骨髄移植した(JAK2V617F-BMTマウス)。JAK2V617F-BMTマウスにアンジオテンシンII を投与したところ、対照群と比較して腹部大動脈瘤の発症が有意に増加した。JAK2V617F-BMTマウスの大動脈組織では血管壁の弾性線維の破綻が認められ、ゼラチンザイモグラフィーではマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)2とMMP9活性が有意に増加、免疫染色では浸潤したCD68陽性マクロファージの増加を認めた。さらに、JAK2V617Fマウスの骨髄細胞をGM-CSFによりマクロファージに分化培養したところ、Mmp2、Mmp9の遺伝子発現が増加していた。最後に、JAK2阻害薬Ruxolitinibを、JAK2V617F-BMTマウスに投与したところ、アンジオテンシンIIによる腹部大動脈瘤の発症が減少した。これらの結果から、JAK2V617F変異骨髄細胞は、大動脈組織に浸潤した骨髄由来マクロファージとMMP2、MMP9を介して大動脈瘤形成を促進させることが示された。
連絡先
公立大学法人福島県立医科大学 医学部 循環器内科学講座 三阪智史
電話:024-547-1190
FAX:024-548-1821
講座ホームページ:https://www.fmu.ac.jp/home/int-med1/intmed1main.htm
メールアドレス:misaka83@fmu.ac.jp(スパムメール防止のため、一部全角表記しています)