福島県立医科大学 研究成果情報

第27回日本リウマチ学会 北海道・東北支部学術集会 最優秀賞〔平成29年11月受賞〕(2017-11-24)

生物学的製剤抵抗性の成人Still病におけるコルヒチンの有効性

古谷(屋代) 牧子 (ふるや(やしろ)・まきこ)
医学部 リウマチ膠原病内科学講座 専攻医
        
研究グループ
古谷(屋代)牧子、松岡直紀、浅野智之、佐藤秀三、小林浩子、渡辺浩志、右田清志

今回の受賞について

第27回日本リウマチ学会 北海道・東北支部学術集会

日本リウマチ学会は、リウマチ性疾患の研究および診療内容の向上を推進することを目的とし、50年以上活動している歴史ある学術団体です。現在の会員数は1万名を超え、日本におけるリウマチ膠原病の分野において、最も大きな学術団体となっています。
北海道・東北支部は全国に6つある支部の一つであり、毎年秋に支部学術集会が開催されます。平成29年は山形において、第27回日本リウマチ学会 北海道・東北支部学術集会が開催されました。

賞について

今回、第27回日本リウマチ学会 北海道・東北支部学術集会において、新たに「次世代を担う若手医奨励賞セッション」が設けられました。各地区から推薦された計8名の代表者がプレゼンテーションを行い、本演題が最優秀賞に選ばれました。

概要

成人Still病は高熱、関節炎、皮疹などの症状を主徴とする炎症性疾患であり、指定難病の対象となっています。20歳から40歳に多く発症すると言われていましたが、近年では高齢発症も報告されています。
治療には主にステロイドが使用されますが、減量での再燃率も高く、長期的なステロイド使用による副作用が問題となっています。難治性の成人Still病患者においては、ここ数年で生物学的製剤の有効性が報告されていますが、感染症などの副作用の問題や、注射製剤であること、高価な薬剤であることも考慮しなくてはなりません。今回、難治性・再発性で生物学的製剤抵抗性の患者さまにおいて、従来から他疾患に使用されているコルヒチンが有効であった症例を経験し報告しました。
成人Still病は遺伝的要因を背景とし、感染症などの環境要因が引き金となって、マクロファージで代表される自然免疫系の活性化と、それに伴う高サイトカイン血症が病態の中心にあると考えられています。その中でもIL-1βがsignature cytokineとされており、実際、我々が開発した活性型IL-1βの検出系において、成人Still病の方の血清中には大量の活性型IL-1βが検出できました。
コルヒチンは、微小管を介しNLRP3インフラマソームの活性化を抑制する作用が既に明らかになっています。コルヒチンはIL-1βの上流に位置するNLRP3インフラマソームを抑制することで、IL-1βの活性化を阻害すると考えられました。今回の症例においては、コルヒチンの導入により寛解が得られており、比較的安全性が高く安価であるコルヒチンの有用性が示唆されました。
現在、コルヒチンが有効である症例について、その特徴などを更に考察しています。今後も一つ一つの症例を大切にし、臨床に役立つ新たな知見を発信していきたいと考えています。

(古谷(屋代)牧子)


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連絡先

公立大学法人福島県立医科大学 医学部 リウマチ膠原病内科学講座 専攻医
古谷(屋代) 牧子

電話:024-547-1171/FAX:024-547-1172

講座ホームページ http://www.intmed2.fmu.ac.jp/rheumatology/

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