福島県立医科大学 研究成果情報

第8回 日本泌尿器内視鏡学会 学会賞 〔平成29年11月受賞〕(2017-11-17)

Atherosclerosis as a Predictor of Delayed Recovery From Lower Urinary Tract Dysfunction After Robot-Assisted Laparoscopic Radical Prostatectomy

Neurourology and Urodynamics 35:920-925 (2016)(動脈硬化はロボット支援前立腺全摘除術後の下部尿路機能障害遷延の予測因子となりうる)

矢部 通弘 ( やべ・みちひろ )
医学部 泌尿器科学講座 病院助手

        

今回の受賞について

【 日本泌尿器内視鏡学会 】(Japanese Society of Endourology) 泌尿器科における内視鏡手術等低侵襲医療は、非常に大きな診療領域を占めています。 1980年代に始まった上部尿路結石に対する内視鏡治療や体外衝撃波結石破砕療法の導入・普及に対応し、1987年に前身となる「日本Endourology・ESWL研究会」が立ち上げられました。その後、1997年に「泌尿器腹腔鏡下手術研究会」が合流し、腹腔鏡手術の普及とともに、2011年に名称を「日本泌尿器内視鏡学会」に改称しました。医療機器・医療技術の開発・普及により泌尿器科における低侵襲医療は目覚ましい発展を続けています。

【 賞について 】 日本泌尿器内視鏡学会では、前年に発表された泌尿器内視鏡に関する論文において、特に素晴らしい論文に対して学会賞を授与してきました。今回、本論文が第8回日本泌尿器内視鏡学会学会賞に選ばれ、第31回日本泌尿器内視鏡学会総会において表彰されました。

概要

近年、動脈硬化と下部尿路症状の関連が示唆されており、本講座ではこれまでに臨床・基礎それぞれにおいてその関連を証明してきました(LUTS, 2012、J Urol, 2015等)。 それと並行し、ロボット支援前立腺全摘除術(RARP)術後の早期尿禁制獲得のため様々な観点から継続的な研究を行い、Charlson Comorbidity Index(JSE, 2014)がRARP術後尿失禁遷延の因子であることの証明や、早期尿禁制獲得のための新たな術式の開発(Urology, 2014)を行ってきました。 今回、さらにこれまでの研究を発展させ、術後の下部尿路機能障害の遷延に動脈硬化が関連しうるかについて検討を行いました。その結果、動脈硬化群では排尿機能障害の回復が遷延し、排尿症状、QOLの悪化を引き起こすことが示唆されました。 前立腺全摘除術後の下部尿路機能障害は、患者のQOLを低下させる主たる合併症の1つです。術前に下部尿路機能障害遷延のリスクが予測できれば、手術を回避するなど適切な治療法の選択に寄与することができ、適切な治療選択は患者満足度の向上につながります。 また、今回動脈硬化の評価に用いたCAVI(Cardio-Ankle Vascular Index)は、動脈硬化のスクリーニングに広く用いられているツールで、簡便に動脈硬化の有無を評価することができます。負担の少ない検査でリスクを評価し、術後合併症の減少や患者満足度の向上に寄与できる可能性があると考えられました。 今後もより一層、臨床に役立つ研究を積み重ねていきたいと考えております。

(矢部通弘)


関連サイト

連絡先

公立大学法人福島県立医科大学 医学部 泌尿器科学講座  病院助手 矢部通弘 電話 024-547-1316 / FAX 024-548-3393 講座ホームページ http://www.urology.fmu.ac.jp/ メールアドレス 講座代表メールアドレス  (スパムメール防止のため、一部全角表記しています)