福島県立医科大学 研究成果情報

英国科学誌「Europace」 掲載 〔平成29年5月〕(2017-05-09)

Anatomical predisposing factors of transmural thermal injury after pulmonary vein isolation

肺静脈隔離術後の食道に対する熱障害を規定しうる解剖学的因子の検討

金城 貴士 (かねしろ・たかし)
医学部(寄附講座)不整脈病態制御医学講座 准教授
        
研究グループ
金城貴士、松本善幸、野寺 穣、上岡正志、神山美之、義久精臣、大河原 浩、鈴木 均、竹石恭知

概要

論文掲載雑誌: 「Europace 」 (2017.5.9 accept.Epub ahead of print) 心房細動に対するカテーテルアブレーション (以下CA)として肺静脈隔離術が急速に普及している。 治療法および治療デバイスの進歩により合併症頻度は低下しているが、左房筋への焼灼により近接する食道粘膜への熱傷害(以下transmural thermal injury: TTI)をきたし、致死的合併症に進展しうる可能性がある。しかし、TTIの頻度、およびこれを予測する有用な規定因子は明らかではない。 我々は心房細動に対してCAを施行した110例を対象に、TTIの発生頻度と、これを規定しうる解剖学的因子の同定を試みた。 全例でCA施行2日後に上部消化管内視鏡を施行した結果、21例(19%)でTTIを認めた。TTIの有無で2群に分類し、年齢・性別等基本的因子に加え、心エコー上の左房径、左房容積係数を比較したが、両群間に差を認めなかった。解剖学的因子として、食道周囲の以下の解剖学的因子、LA-Ao angle: 左房後壁-下行大動脈角度、LIPV angle: 下肺静脈分岐角度、およびLA-Ao distance: 左房-下行大動脈間距離を両群間で比較した結果、TTIを生じた群で、LIPV angleが有意に大きく、LA-Ao distanceが有意に短かった。 多変量解析の結果、LIPV angle (オッズ比 2.144, P=0.0031)およびLA-Ao distance (オッズ比 0.392, P=0.0031)が、TTI発症の規定因子であった。食道周囲の解剖学的近接性が、TTI発症に深く関連していることが明らかとなった。

(金城貴士)


連絡先

公立大学法人福島県立医科大学 医学部(寄附講座) 不整脈病態制御医学講座 准教授 金城貴士
電話 024-547-1190 / FAX 024-548-1821(循環器内科学講座)
講座ホームページ http://www.fmu.ac.jp/home/int-med1/intmed1main.htm
(循環器内科学講座)
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