福島県立医科大学 研究成果情報

米国科学誌「Clinical Rheumatology」 掲載 〔平成29年4月〕(2017-04-28)

Association of anti-triosephosphate isomerase antibodies with aseptic meningitis in patients ith neuropsychiatric systemic lupus erythematosus.

神経精神SLEにおける無菌性髄膜炎と抗トリオースリン酸イソメラーゼ抗体の関連性について

佐藤 秀三 (さとう・しゅうぞう)
医学部 リウマチ膠原病内科学講座 助教
        
研究グループ
佐藤秀三、屋代牧子、浅野智之、小林浩子、渡辺浩志、右田清志

概要

論文掲載雑誌: Springer「Clinical Rheumatology 」(2017;36:1655-1659.) トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)は解糖系酵素の一つであり、エネルギー産生を解糖系に依存している赤血球や神経細胞では重要な酵素である。 以前、我々はTPIに対する自己抗体(抗TPI抗体)における神経精神SLE(NPSLE)の関連性に関して報告してきた。NPSLE患者において、抗TPI抗体陽性率はNPSLE以外のSLE患者や他の自己免疫疾患(強皮症、皮膚筋炎/多発性筋炎)より有意に高い。しかしながら、抗TPI抗体陽性NPSLE患者がどのような臨床的特徴を持つのか、まだよく知られていなかった。 今回我々は当科で治療したNPSLE31例(1995-2016年)患者について、血清中の抗TPI抗体陽性群と陰性群にわけ、抗TPI抗体陽性NPSLE患者の臨床的特徴について解析した。その結果、無菌性髄膜炎の頻度が有意に高く(40%, p = 0.027)、昏迷状態(Acute confusional state)の頻度が有意に低かった。また、血中IgGが有意に高値であり、抗TPI抗体と血清IgG値は正の相関を示した(rs = 0.53, p < 0.01)。なお、髄液やMRI所見は両群で差がみられなかった。 以上から、抗TPI抗体はNPSLEにおける無菌性髄膜炎の病態に関与している可能性が示唆された。 しかしながら、まだその詳細な作用機序は不明であり、今後もさらに研究を進めていく必要がある。

(佐藤秀三)


連絡先

公立大学法人福島県立医科大学 医学部 リウマチ膠原病内科学講座  助教 佐藤秀三
電話 024-547-1171 / FAX 024-547-1172
講座ホームページ http://www.intmed2.fmu.ac.jp/rheumatology/
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