福島県立医科大学 研究成果情報

米国科学誌 「International Journal of Cardiology」掲載〔平成28年8月〕(2016-08-01)

Association between levels of anti-angiogenic isoform of vascular endothelial growth factor A and pulmonary hypertension

血管新生抑制作用を有するVEGF - Aアイソフォームと肺高血圧症との関連

鈴木  聡 (すずき・さとし)
循環器内科学講座 助教
        
研究グループ
鈴木 聡、義久精臣、横川哲朗、三坂智史、坂本信雄、杉本浩一、八巻尚洋、國井浩行、中里和彦、齋藤修一、竹石恭知

概要

論文掲載雑誌: 「International Journal of Cardiology」 2016;222:416-420 〔2016 Aug. 1〕

肺動脈のリモデリングや血栓閉塞を基礎にして発症する肺高血圧症(PH)は、その病態解明とともに様々な薬物療法が導入されてきているものの、未だに致命的となりうる重篤な疾患である。組織における血管新生の促進作用を有する血管内皮細胞増殖因子(VEGF)はPHの形成にも役割を果たすことが報告されているが、近年の研究からVEGFのアイソフォームの一つであるVEGF165bは本来の作用とは逆に血管新生抑制作用をもつスプライシングバリアントであることが報告された。 そこで我々はPH患者における血中のVEGF165bを測定したところ、正常対象者に比べてPH患者では有意にその濃度が高いことが分かった。多変量回帰分析による解析ではVEGF165bにもっとも強く関与する因子はPHであった。さらにPHの原疾患による分類では、PHの重症度や右心カテーテル検査、心エコー所見に差はみられないものの、特発性PH患者のVEGF165b濃度が、膠原病由来のPH、先天性心疾患によるPH、慢性肺血栓塞栓症に比べて有意に高かった。 以上から、PHの中でも特発性PHの病態形成にVEGF165bが強く関与している可能性が示唆された。

(鈴木  聡)


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公立大学法人福島県立医科大学 医学部 循環器内科学講座  鈴木  聡
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