福島県立医科大学 研究成果情報

2016年度 米国泌尿器科学会 Best of Posters 〔平成28年5月受賞〕(2016-05-10)

TKI induces GLUT1 expression through IL-6 secretion on renal cell carcinoma cells

腎癌の分子標的薬TKIによるIL-6分泌を介したGLUT1の発現

石橋 啓 (いしばし・けい)
医学部泌尿器科学講座 准教授

AUA 2016 Annual meeting SanDiego, CA

        

今回の受賞について

【 米国泌尿器科学会(American Urological Association: AUA) 】
1902年に米国の New York で設立され、世界各国から18,000名の会員を有する泌尿器科学の領域に国際的な学会です。全米のみならずアジア、ヨーロッパ各国から演題が応募されBest of Posters賞は、各部門で特に優れた研究に与えられるものです。

 

概要

昨年度の受賞 に続けて、2年連続の受賞となりました。
本研究は、昨年の腎癌と分子標的薬、そしてサイトカインの一種IL-6との関係性についての解析をさらにすすめ、グルコーストランスポーターの発現と病理組織学的検討を加えたものです。
前回は腎癌細胞に分子標的薬を作用させると、腎癌細胞からIL-6が分泌されAKT-mTOR経路を活性化、HIFやVEGFを発現するため、腎癌がTKI耐性となる可能性があることを示しました。そして、腎癌にTKIとIL-6受容体抗体を併用で投与すると強い抗腫瘍効果を認めました。このときの抗腫瘍効果の評価には本学に導入されております動物用のFDG-PET CTを用いたのですが、TKIとIL-6受容体抗体併用療法において腫瘍壊死の増加のみならず、SUV値の低下も観察されました。そのことから、IL-6分泌が腎癌のGLUT1発現に関わっているのではと考えGLUT1発現の解析をいたしました。すると、腎癌はTKI投与によって非常に強くGLUT1を発現するようになるのが観察されました。
つまり、臨床的に分子標的薬の投与量を減らしたり、または休薬したりしたときに腫瘍が再増殖する現象がしばしば認められますが、これは場合によっては本研究のようにIL-6によるGLUT1発現を介した細胞活性化が関与している可能性があると考えられました。そしてこのGLUT1発現はIL-6受容体抗体の併用で抑制することが可能でした。

本研究は腎癌のTKI耐性のメカニズムを研究したもので、IL-6によりVEGF分泌やGLUT1発現を介して腎癌細胞は増殖することから、TKI投与により腎癌から分泌されるIL-6がTKI耐性化に関与している可能性が強く示唆されました。そしてIL-6受容体抗体はリウマチなど慢性炎症性疾患に実際に使用されており、今後臨床応用も可能ではないかと考えております。
今後も研究内容を深め、いつか実際に臨床に役に立つような研究を進めていきたいと思います。

(石橋 啓)

 


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