福島県立医科大学 研究成果情報

2015年度 米国泌尿器学会 Best of Posters 〔平成27年6月受賞〕
AUA 2015 Annual meeting New Orleans, LA(2015-06-30)

IL‐6 receptor antibody enhances the effect of TKI against renal cell carcinoma

腎癌に対する分子標的薬TKIとIL‐6受容体抗体の併用療法

石橋 啓 (いしばし・けい )
福島県立医科大学 医学部泌尿器科学講座 准教授
        

今回の受賞について

【 米国泌尿器科学会(American Urological Association: AUA) 】
1902年に米国の New York で設立され、世界各国から18,000名の会員を有する泌尿器科学の領域に国際的な学会です。全米のみならずアジア、ヨーロッパ各国から演題が応募されBest of Posters賞は、各部門で特に優れた研究に与えられるものです。

概要

本研究は、腎癌と分子標的薬、そしてサイトカインの一種IL-6との関係性についての内容となっております。
腎癌細胞に分子標的薬を作用させると、腎癌細胞からIL-6が分泌される株があり、IL-6を分泌する癌細胞はAKT-mTOR経路を活性化させてしまうことから、最終的にHIFやVEGFを発現するため、TKI耐性になる可能性があることを示しました。そしてこのIL-6の分泌はTKIの濃度が低くても、高濃度のTKIを作用させた場合とほとんど変わらない濃度で発現しました。つまり、臨床的に分子標的薬の投与量を減らしたり、または休薬したりしたときに腫瘍が再増殖する現象がしばしば認められますが、これは場合によっては本研究のようにIL-6が関与している可能性があると考えられました。また、逆にTKI投与でIL‐6を分泌する腎癌はTKI耐性であることが示唆されます。さらにTKIによらずIL‐6を自己分泌するような腫瘍はいわゆるpoor riskの腫瘍となると考えます。

本研究ではこのような腎癌の微小循環におけるIL‐6の役割を重視し、IL‐6受容体抗体をTKIと同時投与する事でTKIの効果を上げることが出来るのではないかという研究です。そしてin vitro、in vivo双方においてIL‐6シグナル抑制がTKIの癌細胞抑制効果を上げ、さらに血管新生による再潅流を抑制する事を示しました。IL‐6受容体抗体はリウマチなど慢性炎症性疾患に実際に使用されており、今後臨床応用も可能ではないかと考えております。
今後も研究内容を深め、いつか実際に臨床に役に立つような研究を進めていきたいと思います。

 

 

 

(石橋 啓)


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