福島県立医科大学 研究成果情報

英国雑誌「Cardiovascular Research.」掲載 〔平成25年8月〕(2013-08-30)

Deficiency of senescence marker protein 30 exacerbates angiotensin II-induced cardiac remodelling.

加齢指標タンパク質SMP30の欠損は、アンジオテンシンII誘導性の心臓リモデリングを増悪する

三阪 智史 (みさか・ともふみ)
福島県立医科大学 循環器・血液内科学講座 博士研究員
        

概要

論文掲載雑誌: Cardiovascular Research. 2013 Aug 1;99(3):461-470 加齢は、心不全をはじめとする心血管疾患の重要なリスク因子のひとつである。 Senescence marker protein 30 (SMP30)は加齢に伴い減少する分子量34kDaのタンパク質として発見され、SMP30は抗酸化作用、抗アポトーシス作用を有し、抗老化蛋白として機能していることが示唆されている。酸化ストレスやアポトーシスは、心臓リモデリングや心不全の病態に重要な役割を果たしているが、SMP30の心臓における機能についてはこれまで検討されていなかった。 本論文では、SMP30の心臓での機能を検討し、SMP30の心臓リモデリングにおける役割を明らかにした。 SMP30 ノックアウトマウスを用いて、アンジオテンシンⅡを持続投与した。アンジオテンシンⅡ投与後、SMP30ノックアウトマウスでは、野生型マウスと比べて心肥大の増悪と心筋組織の線維化の進行を認め、また左室収縮能および拡張能の低下と左室拡張末期径の増大を認めた。SMP30 ノックアウトマウスは野生型マウスより有意にアンジオテンシンⅡによる活性酸素種の増加を認め、その活性酸素種の増加は、NADPHオキシダーゼ活性の上昇を伴っていた。TUNEL染色による検討では、TUNEL陽性心筋細胞数はSMP30 ノックアウトマウスでは野生型マウスよりも著明に多かった。さらに心筋細胞老化について検討したが、老化の生化学マーカーであるsenescence associated-β-gal染色において、陽性心筋細胞数は野生型マウスと比べてSMP30ノックアウトマウスで有意な増加を認めた。 SMP30の欠損により、アンジオテンシン Ⅱ誘導性の心肥大、心機能障害、心臓リモデリングが増悪することが示され、SMP30は抗酸化作用および抗アポトーシス作用を介して心保護的に機能し、心不全の発症・進展を抑制することを示唆している。

(三阪 智史)


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