福島県立医科大学 研究成果情報

「科学技術分野の文部科学大臣表彰」科学技術賞(研究部門) 〔平成25年4月受賞〕(2013-04-08)

「霊長類の神経回路を選択的に制御する手法に関する研究」

小林 和人 (こばやし・かずと)
福島県立医科大学 医学部附属生体情報伝達研究所 生体機能研究部門 教授<
        

今回の受賞について

文部科学省では、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた研究者について、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、日本の科学技術水準の向上に寄与することを目的とする「科学技術分野の文部科学大臣表彰」を定め、年1回表彰を行っています。

4月8日に発表された、平成25年度の科学技術分野大臣表彰において、医学部附属生体情報伝達研究所  生体機能研究部門 小林和人教授が科学技術賞(研究部門)を受賞しました。
自然科学研究機構・生理学研究所 の伊佐 正(いさ・ただし)教授、京都大学大学院・生命科学研究科 の渡邉大(わたなべ・だい)教授と行った、標記の研究業績が認められての共同受賞です。

表彰式は4月16日、文部科学省にて行われます。 〔関連サイト〕
文部科学省 (http://www.mext.go.jp/)
   「科学技術分野の文部科学大臣表彰」平成25年度 報道発表ページ

概要

さまざまな脳機能は、複雑な神経回路ネットワークにおける情報の処理と統合に依存する。神経回路の構造と機能を解明するには、個々の神経細胞の活動と行動の間の相関関係を追うだけでなく、特定の神経細胞種、神経経路を選択的に活性化したり、機能阻害するなど制御して因果関係を究明する必要があった。しかし、特定の細胞種で機能する選択的プロモーターは限定的であり、特に遺伝子改変動物を作製することができない霊長類など他の動物種では不可能であった。 本研究では、神経終末より取り込まれ、軸索を逆行性に輸送され、細胞体へ遺伝子を導入する高頻度逆行性遺伝子導入(HiRet)ベクターと細胞体に直接遺伝子導入するもう一つのベクターを組み合わせた二重遺伝子導入法を開発し、特定の神経路の経路選択的・可逆的な神経伝達遮断により、霊長類モデル(マカクザル)において手指の精緻な把持運動に重要な役割を果たす神経回路の同定に成功した。 小林研究室では、本研究業績において、基盤となる技術であるHiRetベクターの開発を行った。本ベクターでは、レンチウイルスベクターの表面の糖タンパクを水泡性口内炎ウイルス糖タンパク質と狂犬病ウイルス糖タンパク質の一部から構成される新しい融合糖タンパク質に改変し、高頻度な逆行性遺伝子導入をはじめて可能にした。この成果は、二重遺伝子導入による経路選択的・可逆的神経伝達遮断法のもっとも根幹をなす技術基盤を提供した。 HiRetベクターは、神経伝達の遮断ばかりでなく、特定神経細胞の除去、光や化学物質を用いた神経細胞の活動制御にも有効であり、今後の神経回路研究に有益なツールを提供するものと期待される。

(小林和人)


連絡先

公立大学法人福島県立医科大学 医学部附属生体情報伝達研究所 生体機能研究部門
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