福島県立医科大学 研究成果情報

包括脳ネットワーク若手優秀発表賞 〔平成24年7月受賞〕(2012-07-26)

逆行性レンチウイルスベクターによる   特定神経路の機能制御と行動生理学的解析

加藤 成樹 (かとう・しげき)
福島県立医科大学 医学部附属生体情報伝達研究所
生体機能研究部門 助教
        

今回の受賞について

受賞支援団体【包括型脳科学研究推進支援ネットワーク】

包括型脳研究推進支援ネットワークは、平成22年度より文科省新学術領域研究に採択され、脳研究の新手法・新領域の芽を育て、若手脳研究者の育成を行うために、以下のような活動を行っています。

 

  1. 文科省特定領域研究「統合脳」5領域で培った脳神経科学者のコミュニティーを維持拡大する
  2. 技術支援を軸に、脳科学の最新技術の普及を目指す
  3. 脳神経科学の若手育成を行う
  4. 我が国の脳科学研究の将来を議論する

 

【包括脳ネットワーク若手優秀発表賞】

包括型脳科学研究推進支援ネットワーク夏のワークショップで、若手研究者による特に優れた発表に対して、若手優秀発表賞を表彰することとなり設定された賞で、7月26日に授賞式が執り行われました。

概要

脳機能を解明するためには、神経回路を構成する様々なニューロンや神経路がどのように制御され、それがどのような形で行動としてアウトプットされるかを解析する必要がある。
我々は、狂犬病ウイルス糖タンパク質(RV-G)と水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSV-G)を融合した糖タンパク質を用いて組換えた改変型レンチウイルスベクターが、高頻度逆行性遺伝子導入 (highly efficient retrograde gene transfer or HiRet) を示すこと、および新規の融合糖タンパク質が神経細胞に特異的でグリア細胞等分裂性の細胞には導入されない 新しいタイプのニューロン特異的逆行性遺伝子導入 (neuron-specific retrograde gene transfer or NeuRet) を示すことを明らかにした(Kato et al. 2011a, b, Hum. Gene Ther.)。
さらにHiRetベクターとイムノトキシン細胞標的法を組合せることで、標識された特定神経路のみを脳内から除去することを可能とし、この技術を用いて視床-線条体神経路を除去したモデル動物の行動解析を行ったところ、学習の獲得・実行に障害が現れることを見出した(Kato et al. 2011c, J Neurosci.)。
HiRetとNeuRetベクターは共に、従来のベクターよりも格段に高い遺伝子導入効率を持ち、脳内の様々な神経路や筋肉を介した運動ニューロンへの遺伝子導入を可能とすることから、イムノトキシン細胞標的法、光刺激法、Cre-loxPシステム、Tet-on/offシステムなどと組合せることで、ベクターにより標識された特定神経路の活動のみを促進的・抑制的に制御できる。
これは、脳機能の基盤となる神経回路の制御機構の解明に貢献し、今後我々は大脳基底核が関わるとされる行動や病態の研究に発展させる予定である。

(加藤成樹)


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連絡先

公立大学法人福島県立医科大学 医学部附属生体情報伝達研究所 生体機能研究部門
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