福島県立医科大学 研究成果情報

第12回「小児医学川野賞」(臨床・社会医学分野)受賞(2012-03-16)

「小児慢性糸球体腎炎の病態生理の解明とそれに基づく診断、治療法の確立に 関する検討」

医学部小児科学講座 准教授 川崎幸彦氏が第12回 「小児医学川野賞」(臨床・社会医学分野)を受賞しました。

川崎幸彦
福島県立医科大学 医学部小児科学講座 准教授
        

今回の受賞について

 財団法人川野小児医学奨学財団は、小児医学研究に対する助成、および将来小児医学を志す医学生に対して奨学助成を行い、小児医学の向上・発展に役立つことを目的に1989年に設立されました。
小児医学川野賞は、小児医学や関連する研究の奨励を図るため財団設立10周年を記念して設けられ、基礎・臨床各分野で優れた業績を上げ、学術の進歩に貢献した研究者を表彰しています。

平成23年度第12回小児臨床・社会医学分野では福島県立医科大学医学部小児科学講座准教授 川崎幸彦氏が選出されました。
昨年9 月に小児医学関係の42 の学会、大学医学部小児科、主な子ども病院等に推薦を依頼し、その結果推薦された16人候補者の研究内容を書類審査し、川野賞選考委員会にて協議の結果、基礎医学と臨床・社会医学分野にて各々1名の受賞者が決定しました。贈呈式と受賞講演は平成24年3月10日に執り行われ、理事長の川野幸夫氏から賞状と副賞の賞金を授与されました。

概要

川崎幸彦氏は、小児腎疾患の臨床病理学的検討と予後不良因子の解析、実験腎炎を用いての腎炎発症・進展に関与する各種因子、化学物質が果たす役割の検討、さらに小児慢性腎疾患の治療法の確立に寄与する検討を続け、数多くの業績を挙げてきました。 同氏は、IgA腎症のモデルマウスであるHIGAマウスを使用し、ウイルス感染時の腎炎増悪機序を詳細に検討し、腎炎がウイルス感染により増悪する機序を動物モデルにて初めて明らかにしました。さらに、ヒト腎生検組織を用いた検索では、小児IgA腎症患児の30%からエンテロウイルス遺伝子を検出し、IgA腎症へのエンテロウイルスの関与を証明しています。また、1974年以降本邦で施行されている学校検尿が膜性増殖性糸球体腎炎の予後改善に有効であることや各種腎炎発症時のTh1/Th2バランスに関する検討に加え、腎内の活性化したマクロファージやメサンギウム細胞の形質転換が腎炎発症後の硬化進展因子の一つとして重要であることなどを示し、さらにヒト腎糸球体内皮細胞の特異的マーカーであるFB21を発見しております。このような研究成果を基に新たな治療法の確立を目指し、ネフローゼ症候群、IgA腎症や紫斑病性腎炎などの各種腎炎に対するステロイド剤と免疫抑制剤を組み合わせた多剤併用療法の有効性を示しました。特に重症型紫斑病性腎炎に関する治療として、ステロイド・ウロキナーゼパルス療法を主とする多剤併用療法や血漿交換療法が有効であることを明らかにしています。また、小児重症型IgA腎症においては多剤併用療法や扁桃摘出+ステロイドパルス療法が高い蛋白尿の減少効果と腎組織の硬化抑制作用を有することを示しました。 これらの研究は、小児期発症慢性糸球体腎炎の病態生理の解明と診断および治療法の確立において、臨床小児医学の医療発展に寄与をする内容であることが評価され、受賞に至りました。

 

受賞略歴

平成17年 第4回小児医学研究振興財団設立準備室 日本イーライリリー海外留学フェローシップ受賞 平成18年 平成17年度 福島医学会学術奨励賞受賞 平成20年 平成19年度 福島医学会賞受賞 平成20年 第38回日本腎臓病学会東部学術大会優秀演題賞受賞 平成23年 第1回「日本小児科学会学術研究会賞」受賞

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