福島県立医科大学 研究成果情報

米国雑誌「Thyroid」掲載(令和6年10月14日電子版)(2024-11-11)

Clinicopathological findings of 220 pediatric, adolescent, and young adult patients with thyroid cancer in Fukushima Medical University Hospital

福島県立医大甲状腺内分泌外科における若年甲状腺がん220例の検討

松本 佳子 (まつもと・よしこ)
甲状腺内分泌学講座 学内講師
        
研究グループ
福島県立医大甲状腺内分泌学講座 松本佳子、古屋文彦等

概要

論文掲載雑誌:「Thyroid」(October 14, 2024)


福島県「県民健康調査」の甲状腺検査は、2011年3月11日の東京電力福島第一原子力発電所事故後の小児の甲状腺がんの増加が懸念されたことから開始されています。甲状腺検査では2021年9月までに263人が悪性ないしは悪性疑いとなり、福島県立医大甲状腺内分泌外科に紹介となった220人に外科治療が行われています。診療過程において治療方針・病理診断は学内外の複数の専門医を招聘しての慎重な検討が行われており、これらの結果をまとめた記述的研究を本論文では報告しています。

小児、若年者の甲状腺がんは外科治療による生命予後は良好とされる一方で、周囲組織への浸潤や遠隔転移がみられることが報告され、その病理学的特徴には不明な点も多く、治療法についても国内外で検討が続いています。2021年9月までの福島県立医大甲状腺内分泌外科での手術例は98%がステージ1でしたが、半数で甲状腺外へのがん細胞の顕微鏡的な浸潤が確認されました。約90%の症例に実施された低侵襲の片葉切除術では嗄声や副甲状腺機能低下症といった術後合併症が見られていないこともわかりました。

これまでの研究成果から原子力発電所事故後7カ月間の外部被ばく線量の99.8%は5mSv未満とされ、甲状腺がんとの統計学的関連は認められていません。今回の結果では、甲状腺検査によって発見された甲状腺がんに対して慎重かつ適切な治療が行われていることが示されました。(松本佳子)


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