菊地臣一 コラム「学長からの手紙  〜医師としてのマナー〜

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102.スタッフには何かをする為になるのであって、学ぶ為にスタッフになるのではない

スタッフとは独立研究者に与えられる席です。ややもすると年功序列でただじっと組織に居るとスタッフになるということが、今までは無かったとは言い切れないと思います。そういうことは医局に限らず他の社会にもあります。しかし、他の社会でも既に風向きは変わりました。権利や権力を与えられると、同時にそれと同じ位責任や義務も負わされます。タイトルにもあるように、スタッフになる人間は、それまでに懸命な努力や忍耐が必要とされる駱駝の時代を潜り抜けてきているわけです。スタッフになったからには、何かをして、それを主張しなければなりません。つまりライオンの時代に入るわけです。ですから、強い目的意識を持ってスタッフにならなければ、スタッフになりたくてもなれない人間に対して申し訳が立ちません。お互い、自らを律するべきでしょう。

こういう事に関連して、他の社会ではどういうことが言われているのでしょうか。具体例を挙げてみましょう。ある新聞に書いてあった例え話です。書いているのは「外交と戦略」という点で日本の第一人者である、岡崎久彦氏の言葉です。その人の例え話です。会社員が商社に入るとします。そこでちょっとした失敗をする。そうすると上司は「おまえ、会社に仕事を覚えに来たんじゃないよ」と叱ります。

もう一つの事実を挙げましょう。これは最近の日本の製造業の様変わりの状態を報告している記事です。それによると、松下電気産業では、1年契約の年俸制研究員の制度を最近とったとのことです。また、ソニーの子会社ではコンピューターソフトの基礎研究に、徹底した結果重視の年俸制を取り入れたそうです。NECでは主任スタッフを対象に、裁量労働制をしたそうです。働いた時間で賃金を払うのではなく、業績で判断するというものです。その理由としてNECのある担当者はこう言っています。「研究職に時間管理は当てはまらない、成果主義が本来の姿ではないか」とのことです。この会社では半年毎の目標を設定させ、賞与時に上司と面談で自己評価するそうです。ある大学での内科では、3年連続して文部省の科学研究費が貰えなければ助手を辞職するということがあります。

このようにスタッフに求められるものは決して甘くはありません。ですから、スタッフになった以上はその責務を果たして下さい。別にスーパーマン的な働きを求めているわけではありません。ただ毎日毎日コツコツと何かを、目的意識を持って、為すことを求めているだけです。

 

 

 

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