FUKUSHIMA MEDICAL UNIVERSITY
我々ヒトが様々なことを学び,記憶し,考え決断するときにはいつも,言葉が重要な役割を果たしているように感じられます。それでは,言葉を持たない動物にはこのような心の働きはないのでしょうか。あるいは,言葉を使わずに学習や意思決定を実現する方法があるのでしょうか。私は二つ目の立場をとっています。そして,環境内のものごとの間の確率的関係(たとえば,蛇口をひねれば水が出る,とか,夕日が美しいと翌日は晴れる,など)を動物がどのように内的に表現し,学んでいるのか,という問題を実験心理学的に検討してきました。まだ最終的な答えに辿り着いていませんが,その一方で,学習や意思決定を担う中心的な器官である脳の中で,知識はどのように表現されているのだろうか,そしてヒトや動物はどのようにその知識を運用しているのだろうか,というメカニズムにも関心がわいてきました。また,そのような心の働きの正体を理解するためには,正常機能が破たんするときのプロセスを理解することも必要ではないか,と考えるようになりました(たとえば,うつ病の患者さんが,自分の人生には意味がない,と決めつけてしまう誤信念,など)。現在は行動神経科学や精神医学/薬理学とよばれる領域へと越境しながら,研究をすすめています。