1.ストレスって何でしょうか?
日常生活の中で、“ストレス”という言葉は気軽に使われています。例えば、「最近ストレスがたまっている」とか「運動でストレス発散しよう」など様々な場面でストレスという言葉が用いられています。では、このストレスとういう言葉はいつから使われるようになったのでしょうか?
元々“ストレス”という言葉は物理学で使われていて、「外からかかる力による物質の歪(ひず)み」のことを意味していました。人では、カナダのセリエ博士が1936年に“ストレス学説”を発表したことから、医学の世界でもこの言葉が使われ始めました。医学的には、外からの刺激に対するからだやこころの反応のことを“ストレス反応”と呼び、その反応を生じさせる刺激(ストレスの原因)のことを“ストレッサー”と呼んでいます。一般に言うストレスはこの両方の意味を含んでいます。

図に示しますように、心理社会的なストレス(ストレッサー)が持続すると、生活習慣の変化(過食、多量飲酒、喫煙等)や身体的な反応(血圧上昇、血小板機能亢進、糖・脂質代謝異常)を介して、脳卒中や虚血性心疾患などの重篤な疾患が起こりやすくなります。早い段階でストレスに気づき、適切な対処法を行うことでストレス関連疾患は予防できる可能性があります。
2.ストレスと関連する疾患は?
下記のような疾患がストレスと関連があると報告されています。
- ① 高血圧、脳卒中、虚血性心疾患
- ② 胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群
- ③ パニックディスオーダー
- ④ 拒食症、過食症
- ⑤ 慢性腰痛、頭痛、肩こり、筋肉痛、書痙
- ⑥ 甲状腺機能異常、慢性関節リウマチ、膠原病
- ⑦ 気管支喘息、過換気症候群
- ⑧ アトピー性皮膚炎、慢性じんま疹
- ⑨ めまい症、低血圧症候群、自律神経失調症
3.ストレス関連疾患を予防するためには?
① 自分のストレスに気づきましょう!
ストレス対処の第一歩は自分のストレス、そしてストレスから起こるこころ及び体調の変化に気づくことです。特に「気分が沈む」、「何をするのにもやる気が出ない」などのこころの症状に加えて、「頭が重い」、「めまいがする」、「息苦しい」など原因不明の体調の変化に関する症状が続く場合には、ストレスから起こる症状である可能性があります。
② 健診を受けましょう!
ストレスによる身体の影響を早く発見するために、高血圧、脂質異常、糖尿病など、初期には症状がない生活習慣病を、定期的に健診を受診することによって管理しましょう。
③ 生活習慣に気をつけましょう!
普段から身体活動量が多い人や定期的に運動を行っている人では、うつが起こりにことに加え、うつ症状を既に持っている人においても定期的な有酸素運動が症状改善に効果があることが報告されています。また。野菜、果物、魚、全粒粉を含む健康的な食事がうつ症状のリスクを減少させることが示されています。
④ 睡眠を十分にとりましょう!
睡眠の質・量を十分に確保することは、ストレス耐性を高めます。逆に、急に眠れなくなったり、朝に起きれなくなったりすることが、ストレスのサインである可能性があります。

⑤ ストレス解消しましょう!
趣味や運動等で気分転換すること、また友人とのおしゃべりなどでストレスを発散することはストレス対策として有用です。少しの時間でもストレスを忘れることがストレスの悪循環を予防します。
⑥ 誰かに相談しましょう!
家族や友人に相談することは、ストレスによる心身への影響を弱める働きがあります。話を聞いてもらうだけでも心理的な安心感が得られたり、相談しているうちに、自分の頭の中でストレスの原因が整理できる効果もあります。
⑦ こころとからだをリラックスしましょう!
趣味、入浴、ストレッチなどの軽い運動など、1日に最低30分は自分のためだけの時間を作り、こころとからだをリラックスしましょう。

⑧ 日記を書いてみましょう!
日記を書くことによって客観的にストレスを振り返ることができるようになるだけでなく、良いことを探して日記に書くようにすると、物事を前向きにとらえられるようになります。
⑨ 1日1回は声を出して笑いましょう!
笑うことによってストレス関連ホルモン及び血糖値の低下や不眠の解消に繋がることが報告されています。面白いから笑うのはあたりまえで、面白いことを見つけて、そして面白くなくてもとりあえず笑ってみると意外に気分がすっきりします。
⑩ 人生の目標を持ちましょう!
人生の目標を持っていると、多少のストレスがあっても動じにくくなります。例え小さい目標でもよいので、何らかの目標(希望)を持つようにしましょう。アウシュビッツ収容所を経験したヴィクトール・フランクルは、「希望」と「ユーモア」を持ち続けることが、過酷な環境を生き抜く上での重要なキーワードであったことを著書の中で述べています。

(大阪府立健康科学センター編、ストレス予防・対処マニュアルを改変)