研究班の紹介
1. 事業名:予防・健康づくりの社会実装に向けた研究開発基盤整備事業
プログラム名 :ヘルスケア社会実装基盤整備事業
研究開発課題名:生活習慣病予防のための行動変容を評価する包括的な社会心理行動指標に関する研究
2. 委託期間 (全研究開発実施予定期間)
令和4年9月26日から令和7年3月31日
3. 研究開発体制
研究開発代表者:福島県立医科大学医学部疫学講座 教授 大平 哲也
研究開発分担者
地方独立行政法人大阪健康安全基盤研究所 公衆衛生部疫学解析研究課 課長 清水 悠路
順天堂大学 大学院医学研究科公衆衛生学 教授 山岸 良匡
大分大学 医学部公衆衛生・疫学講座 教授 斉藤 功
慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室 教授 岡村 智教
順天堂大学 大学院医学研究科公衆衛生学 教授 野田(池田) 愛
大阪大学大学院医学系研究科社会医学講座環境医学 准教授 村木 功
(所属変更 現 筑波大学医学医療系 社会健康医学 教授)
研究の目的と方法
生活習慣病予防のための行動変容を評価する包括的な社会心理行動指標の開発を目的として、以下の4つの研究を実施

研究内容
本研究は、以下の4つの研究開発項目を実施することにより、継続性、有効性が高い行動変容指標を確立するが、本年度は①~④について以下のように研究を進める。
- ①生活習慣病を予防するための行動変容の指標及び評価方法に関するシステマティックレビュー
- ②長期に亘って生活習慣病の予防活動を行っている地域・職域集団を対象とした生活習慣病を予防するための行動変容の評価と包括的な社会心理行動変容指標の確立に関する研究
- ③地域・職域で実施されているヘルスケアサービスの有効性の検討と行動変容指標の適用に関する研究
- ④ヘルスケアサービスへの行動変容指標の適用とその評価に関する社会実装研究
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(1)生活習慣病を予防するための行動変容の指標及び評価方法に関するシステマティックレビュー +
生活習慣病発症に対する行動変容(指標:生活習慣の改善、健康行動)の効果について、定量的システマティックレビューであるメタ解析を行い、生活習慣病発症に関連が強い行動変容指標を抽出する。システマティックレビューは、アウトカムを生活習慣病(肥満、高血圧、脂質異常、糖尿病)として、行動変容指標(アプリ使用、ストレスコーピング、社会活動、歯磨き頻度、昼寝)との関連についての前向き観察研究及び介入研究の抽出を行い、システマティックレビュー及びメタ分析を行った。その結果、下記図のように、ヘルスケアアプリの利用やストレスコーピングが体重減少と関連すること、ストレスコーピングが血圧値を下げることなど、いくつかの項目で生活習慣病予防に効果的な社会心理行動要因が抽出された。
システマティックレビューの結果のまとめ



(2)長期に亘って生活習慣病の予防活動を行っている地域・職域集団を対象とした生活習慣病を予防するための行動変容の評価と包括的な社会心理行動変容指標の確立に関する研究 +
対象はⅰ)CIRCS研究に参加した秋田、茨城、大阪、高知の住民、ⅱ)東温スタディに参加した愛媛の住民、ⅲ)福島県「県民健康調査」に参加した福島の住民、及びⅳ)職域集団及び茨城県の地域住民である。上記のコホートデータを用いて、生活習慣に関する行動変容指標及び社会心理的指標→生活習慣の継続及び変化→生活習慣病の発症→循環器疾患の発症のプロセスを明らかにすることを目的とした。
社会心理的因子と生活習慣との関連を5~12年間に亘って縦断的に分析した結果、地域住民の縦断調査の結果、自覚的ストレスの継続は運動習慣、魚摂取、大豆製品摂取が少ないこと、朝食を欠食すること、油料理が多いことと関連した。ストレス解消法がないことの継続は喫煙率が高いことに、社会的支援が少ないことの継続は多量飲酒と関連した。以上より、自覚的ストレス、うつ症状、ストレス解消法、社会的支援の有無はそれぞれ生活習慣と関連していたが、その関連は各因子によって違いがみられることが明らかになった。







(3)地域・職域で実施されているヘルスケアサービスの有効性の検討と行動変容指標の適用に関する研究 +
福島県で住民の健康増進のために使用されている「ふくしま健民アプリ」、大阪府で同様に使用されている「アスマイル」に加えて、大分県及び愛媛県で使用されているIoTを用いたヘルスケアアプリのデータの分析を行い、有効性・継続性の高いヘルスケアアプローチを抽出することを目的とした。都道府県のヘルスケアアプリの機能、視認性に関する評価を行うとともに、福島県、大阪府、愛媛県、大分県のヘルスケアアプリのデータを用いて、アプリの起動回数、取得ポイントと歩数との関連、及びアプリの中断の要因についての検討を行った。
アプリの解析結果、アプリの起動(ログイン)回数が多いこと、肥満ではないこと、ポイント取得が多いことが歩数の多さと関連し、アプリの中断の要因として、年齢が若いこと、起動(ログイン)回数が少ないこと、ポイント取得が少ないこと、平均歩数が少ないことが関連していた。




(4)ヘルスケアサービスの有効性評価と行動変容指標の開発を目的とした社会実装研究 +
上記(1)(2)で明らかになった社会心理的行動変容指標について、他の集団においても適合できるかどうか確認する。令和5年度に福島県の健診に併せて評価を行った社会心理的行動変容指標について令和6年度に同様の調査を健診に併せて実施するとともに、生活習慣との関連を前向きに検討することを目的とした。
その結果、自覚的ストレスと運動習慣との関連等の項目はどの地域でもほぼ同様の関連がみられたことから、社会心理的ストレスが運動習慣を介して生活習慣病発症に影響している可能性が示唆された。
問い合わせ
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福島県立医科大学医学部疫学講座
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- 大平、江口