構造的心疾患(SHD)分野
研究テーマ
1. マルチモダリティ画像を活用したSHD治療の最適化
2. SHDインターベンション後の予後・合併症を規定するバイオマーカー/臨床因子の探索
3. 心エコー・血行動態指標による非侵襲的リスク層別化とフォローアップ戦略の確立
CTを用いた自己拡張型弁留置後の弁周囲逆流(PVL)の予測
自己拡張型生体弁は、バルーン拡張型弁で指摘される弁輪破裂のリスクがほとんどない反面、留置後の弁周囲逆流が残りやすいという問題があります。PVLは軽度でも残れば予後に影響するという報告もされており、自己拡張型弁留置前に、留置後のPVLを予測できれば、臨床的な意義があると考え、CTでの大動脈弁複合体の石灰化量でPVLの予測が可能かどうかを検討した研究を行いました。

上記症例提示のように、大動脈弁複合体の石灰化量の量や偏在が留置後のPVLに関連していると仮定し当院で自己拡張型弁を使用したTAVI症例を後向きに解析しました。

自己拡張型弁を留置後、PVLが残存した症例は、残存しなかった症例と比べ、有意にCTで計測した石灰化量が多いことが示されました。

この研究で、大動脈弁複合体のうち、無冠尖、右冠尖、左冠尖、左室流出路の石灰化と大動脈弁複合体全体の石灰化量が術後のPVL予測に有用であることが示唆されました。
(Int Heart J. 2024;65(1):63-70.)
自己拡張型弁の慢性期の形態変化とそれが慢性期PVLに及ぼす影響の検討
自己拡張型弁は留置後から、徐々にその自己拡張能で、時間経過とともに少しずつ拡張し続けるとされていました。さらに、自己拡張型弁において急性期に残存したPVLは慢性期にしばしば減少することが経験され、そのメカニズムの一つが慢性期拡張だとされていました。しかし、それを実際に検証した研究はなく、我々は、慢性期のCTデータと、実際の自己拡張型生体弁のCTデータを比較することで、1)慢性期拡張は実際に観察されるのか、2)慢性期拡張はPVLの減少に関与しているのかの2点を検証しました。

結果、自己拡張型弁を留置した60症例において、留置した自己拡張型弁は全症例で慢性期(3〜6か月)に拡張していることが確認され、CT解析画像により慢性期拡張を可視化することができました。
一方で、全例で慢性期の弁拡張を認めたにもかかわらず、PVLが全症例で改善したわけではなかったため、慢性期拡張が慢性期PVL減少の唯一のメカニズムではないことが示唆されました。
しかし、PVLが改善した群では、改善しなかった群と比較して弁拡張の程度が大きかったことから、慢性期の弁拡張がPVL減少に一定程度寄与している可能性が示されました。
(Cardiovasc Interv Ther. 2025 Jul;40(3):669-678.)
エコーで計測した肝エラストグラフィー(SWE)値を用いたTAVI後の予後予測に関する検討
重症ASでは心機能障害の進行に伴い、うっ血による臓器障害を来すようになり、TAVI前に臓器障害を伴う症例は予後不良と報告されています。一方で、TAVI後の臓器うっ血の評価は限られています。本研究では、TAVI後の肝うっ血に着目し、その意義を検討しました。

肝臓の硬さを超音波で測定するShear wave elastography(SWE)は、肝うっ血を非侵襲的に評価できる指標として有用とされています。本研究では、重症ASに対してTAVIを受け、退院時に肝SWEを測定した患者を対象に、SWEの中央値を基準としてSWE低値群とSWE高値群の2群に分け、予後を比較しました。
その結果、SWE高値群はSWE低値群に比べて、全死亡または心不全再入院が有意に多いことが示されました。さらに背景因子を調整した解析でも、退院時の肝SWE高値は予後不良と独立して関連していました。
これらの結果から、TAVI後の退院時に肝SWEを測定することで、高リスク患者の層別化が可能となり、フォローアップやうっ血管理の強化につながる可能性が示唆されました。
(Int J Cardiol Heart Vasc. 2026 Jan;62:101864.)
これまでの主な業績
- 1.Sato Y, Sato A, Sakamoto K, Muto Y, Sato Y, Yokokawa T, et al. Prognostic value of liver shear wave elastography after transcatheter aortic valve implantation in severe aortic stenosis. Int J Cardiol Heart Vasc 62, 101864, 2026
- 2.Anzai F, Isomatsu D, Misaka T, Sato Y, Muto Y, Sato Y, et al. Clinical impact of circulating calciprotein particles in patients with degenerative aortic valve stenosis undergoing transcatheter aortic valve implantation. Eur J Prev Cardiol 32, 1806–8, 2025
- 3.Isomatsu D, Sato A, Muto Y, Sato Y, Shimizu T, Misaka T, et al. Predictive value of aortic valve calcium volume measured by computed tomography for paravalvular leakage after transcatheter aortic valve implantation. Int Heart J 65, 63–70, 2024
- 4.Muto Y, Isomatsu D, Sato Y, Sato A, Shimizu T, Misaka T, et al. The relationship between chronic expansion of self-expandable valves and paravalvular leakage in transcatheter aortic valve implantation. Cardiovasc Interv Ther 40, 669–78, 2025
- 5.Isomatsu D, Yamaki T, Ikeda A, Oikawa M, Hisa S, Takeishi Y. Intracardiac thrombus associated with heparin-induced thrombocytopenia in a patient with patent foramen ovale. Circ J 88, 1501, 2024
- 6.Isomatsu D, Oikawa M, Muto Y, Kunii H, Takase S, Takeishi Y. Successful implantation of balloon-expandable transcatheter aortic valve against quadricuspid aortic valve stenosis. Oxf Med Case Reports 2024, omae127, 2024
文責:佐藤彰彦