GRIT(やり抜く力)は健康に影響するのか?
- 教授
- 曽根 稔雅
- そね としまさ
- 疫学、公衆衛生学、老年医学、介護予防
私の研究テーマは、介護予防など高齢者の健康に関するものです。健康を考えたときに、生活習慣はもちろんのこと、自分らしく過ごす時間(生きがい)が重要です。生きがいとなる活動を行うことは、ポジティブな心理状態を生み出し、健康的な行動や習慣にも影響し、健康寿命の延伸につながると考えています。
先日、友人からお勧めの本を借りました。「GRIT(やり抜く力)人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける」という本です。仕事で優秀な成果を上げている彼のお勧めの本です。この本を読んで、「GRIT」が仕事に役立つのはもちろんのこと、私たちの健康にも影響するのか?について、私自身や私の周りの人たちの様子から考察してみました。
まず、「GRIT」について説明します。GRITは、「やり抜く力」のことを指します。さまざまな分野で結果を出す人たちの特徴として、「情熱」と「粘り強さ」が挙げられ、彼らは「やり抜く力」を持っています。「情熱」はひとつのことに専念すること、「粘り強さ」は始めたことは最後までやり遂げることです。
「才能」だけでは目標を達成したり、良い成果を上げ続けることができません。良い成果を上げる(達成)には、習得した「スキル」を活用して「努力」する必要があり、その「スキル」は「才能」と「努力」によって速く上達します。つまり、「努力・やり抜く力」は二重に影響するのです(才能×努力=スキル、スキル×努力=達成)。
さて、「GRIT」は仕事や勉強で成果を出すために重要な要素であることは納得できましたが、私たちの健康にも影響するのでしょうか?私自身のことを考えてみると、「GRIT」を発揮して仕事に取り組んでいるときは、健康への配慮が欠けてしまいます。また、私の友人は優秀な成果を上げている「できる男」で、「GRIT」も高いはずです。しかし、ストレスフルな生活を送っており、サウナに通っていますが、健康に配慮した生活は送れていないようです。加えて、私たち共通の知人は「かなりできる男」です。「才能」は高く、「GRIT」も絶対に高いです。仕事では素晴らしい「達成」を積み重ねていますが、さらに高い「達成」を目指す人です。しかし、かなりストレスフルな生活を送っており、健康ではないようです。一方、別の友人は、「GRIT」は最近上昇傾向であるものの、生きがいとなる活動には常に全力です。そのため、睡眠時間を削ることもあり、生活習慣が乱れてしまうようです。
これらのことから、私が出した結論は以下の通りです。特定の時間や時期に「GRIT」を適度に発揮すること、加えて健康に配慮できる時間や生きがいとなる活動をする時間も適度に確保することが重要なのかもしれません。やはり、何事もバランスが大事ではないでしょうか。みなさんも「GRIT」と健康のバランスに気を付けてみて下さい。