福島だから挑戦できる

人口減少や少子高齢化は、日本全体が直面する大きな課題です。高校卒業後の進学や大学卒業後の就職を機に、多くの若者が都市部へ活躍の場を求めています。2025年国勢調査(速報値)では、日本の総人口は前回調査から約310万人(2.5%)減少し、減少数・減少率ともに過去最大となりました。東京都と沖縄県を除く45道府県で人口が減少しており、福島県でも若い世代の県外流出が地域の将来に大きな影響を与えています。

 しかし、この状況を悲観するだけではなく、発想を変えることも大切です。人口減少は、若者の可能性を狭めることではありません。むしろ、一人ひとりが地域から期待され、早い段階から責任ある仕事を任され、自らの力を存分に発揮できる社会へと変わっていく可能性を秘めています。福島には、「若いからこそ任される仕事」があります。若いうちから責任ある役割を担い、自ら考え、挑戦し、その成果を地域社会の中で実感できる環境があります。

 福島県立医科大学は、県内唯一の医科大学として、県民の健康を守るという使命のもと、教育・診療・研究・地域貢献を一体的に推進しています。保健科学部は、福島県の地域医療を支える高度な医療専門職を育成することを目的として設置されました。理学療法学科、作業療法学科、診療放射線科学科、臨床検査学科では、知識を学ぶだけではなく、地域医療の現場に深く関わり、多職種と協働しながら課題を見つけ、解決策を考え、実践する力を養います。

 地域医療では、一人の医療職が果たす役割は決して小さくありません。自分の判断や行動が患者さんの安心につながり、地域医療の質を向上させることを日々実感できます。「自分の仕事が誰かの役に立っている」という実感を得られることは、医療人として大きな喜びであり、次の挑戦への原動力になります。大切なのは、「どこへ行くか」ではなく、「何を学び、誰のためにその力を生かすか」です。

研究も同様です。福島では、生活習慣病、循環器疾患、睡眠、フレイル、認知症、災害後の健康支援など、福島が直面する地域課題そのものが、未来の医療を創る研究テーマでもあります。本学では、学生も地域課題に根差した研究に触れ、臨床と研究を結び付けながら課題解決に挑戦する機会があります。地域に根差した研究成果は、福島だけではなく、日本、さらには世界へ発信され、新しい医療の発展に貢献しています。私は、「地方だから研究ができない」「地方だから成長できない」という時代は終わったと考えています。デジタル技術の発展により、福島にいながら国内外の研究者と協働し、世界へ研究成果を発信できる時代になりました。「どこにいるか」ではなく、「何に挑戦するか」が問われます。

 そして福島には、若いうちから挑戦できる環境があります。都市部では多くの人材の中の一人かもしれません。しかし福島では、一人の挑戦が地域を動かし、一つの研究が医療を変え、一人の医療人が地域住民の健康を支える力になります。その経験は、自分自身の成長を加速させるだけでなく、「社会に必要とされている」という大きな自信につながります。

 私は、福島の未来を支える鍵は、「地域で育った若者が地域で学び、地域で働き、次世代を育てる『人材の地域循環』」にあると考えています。この「人材の地域循環」は、「地域に残る」ことだけを意味するものではありません。県外で学び、多様な経験を積み、その知識や技術を福島へ持ち帰ることも大切な循環です。大切なのは、地域とつながり続け、自らの成長を地域の未来へ還元することです。若者が挑戦し、その挑戦を地域が支え、その経験が次の世代へ受け継がれていく。その循環が続くことで、福島はさらに魅力ある地域へと成長していくでしょう。学生一人ひとりの挑戦は、地域医療を支えるだけでなく、新しい研究や技術、医療の発展にもつながります。地域に近い大学だからこそ、その成果を地域の中で実感できることは、本学ならではの大きな魅力です。

 福島には、美しい自然や豊かな食文化、安心して暮らせる環境があります。しかし、それ以上の魅力は、若い世代が挑戦し、その挑戦が地域の未来へとつながることです。福島県立医科大学は、学生一人ひとりの挑戦を支え、地域社会とともに未来を創る人材を育成しています。高校生や大学生の皆さん、進路を考えるときには、「どこへ行くか」だけでなく、「どこで自分らしく成長し、社会に貢献できるか」という視点も大切にしてください。「福島だからできること」があることを知り、自らの未来を描く選択肢の一つとして、福島で学び、福島で活躍する道を考えていただければ幸いです。福島には、皆さんだからこそ挑戦できる仕事があります。若いうちから責任ある役割を担い、人とのつながりを実感しながら成長できる環境があります。その挑戦は地域を元気にし、地域で得た経験は皆さん自身をさらに大きく成長させてくれるでしょう。福島で学ぶことは、自分の未来を育てること。福島で働くことは、地域の未来を育てること。その二つが重なったとき、「人材の地域循環」が生まれ、福島はさらに魅力ある地域へと発展していくでしょう。私は、福島がこれからも「若者が主役になれる地域」であり続けてほしいと願っています。我々は、その主役となる皆さんの挑戦を支え、ともに学び、ともに福島の未来を育んでいきます。

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