胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)の結果
- 教授
- 宇月 美和
- うづき みわ
- 病理学、人体病理学、リウマチ・膠原病の病理、遠隔病理診断、細胞診断
健康診断は小学校の学校健診から毎年、行われ、就職すれば職場での健診がある。
ある一定の年齢以上になればメタボリックシンドロームや悪性腫瘍の発見につながる項目も含まれるようになってくるが、私自身もそのような検査で「要精密検査」と表示される項目が出るようになった。
先日は上部消化管の内視鏡検査(いわゆる胃カメラ)で気になる所見があり、生検(組織を採取して顕微鏡的に検査すること)がなされた。生検された胃粘膜の標本を作成して、顕微鏡で観察可能な状態にするのは臨床検査技師の業務である。ホルマリンで固定された粘膜組織から余分な水分を除去してから型に入れてパラフィン(ろう)で固める。そして、それを薄く切って、ガラスに載せ細胞を見やすくするために染色するというものである。この一連の作業には「ホルマリンを組織に浸透させる」、「余分な水分を抜く」、「パラフィンを浸透させる」、「薄く切ってガラスに載せて乾かす」、「染色する」など時間をかけなければ失敗してしまう過程があるので、観察可能な標本ができるまでにはどんなに急いでも2日はかかる。もし判断に迷う場合にはさらに別な検査(特殊染色・免疫染色など)が追加される。私は病理医なので、自分の胃粘膜の標本を自分で観察することはできるが、他の病理医にも診てもらい、主治医からの結果説明の日を迎えた。この結果を待つ約2週間は非常に長く感じた。患者さんによっては不安のあまり食欲がなくなることもあると聞いていたが、私自身も「もし入院になったら」など色々なことを考えた。結果は半年後の再検査であった。病理診断は正確であることはもちろんのこと、できるだけ早く診断結果を出すことも重要であると身をもって体験した。
*写真は私の胃粘膜の病理標本の一部です。腸上皮化生と呼ばれる所見がみられます。
