人工知能(AI)と病理診断そしてハト?

最近、人工知能(AI)が様々な分野に利用されるようになってきました。便利な面もある一方、どこまで人間の活動に近づくことができるのか、興味深いです。

我々病理医や細胞検査士が診断をする際には、まず正常の細胞や組織が基本にあって、それらからかけ離れた細胞や組織を異常として診断の材料とします。形をはじめ、色あいや細胞の配列・・・多くの情報をもとに診断していきます。一人前の病理医や細胞検査士になるためには経験を多く積んでいく必要があります。そのような業務をAIが代わりにやってくれて、病理医や細胞検査士が最終チェックをするだけになれば、人員不足を解決できるかもしれず、実用化に向けて多くの研究グループによる研究が進んでおりますが、様々なパラメーターを含む病理画像や細胞画像の自動診断はなかなか難しいようです。2015年11月に科学誌に掲載された論文では米国の病理医Levenson博士と心理学者のWasserman博士が16羽のハトに乳がんのX線画像や病理組織像を見せて良性か悪性かを判定させる訓練をした結果が報告されていました。( https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0141357

鳥類は一般的に視力が優れていると言われていますが、ハトに病理画像を見せて、ボタンを押させ、正解なら食べ物が与えられるという訓練を繰り返していくと、最初は正答率が50%だったのが2週間後には90%を超えていき、特に優秀なハトでは正答率99%という驚くべき結果を示したと報告されています。さらには、学習した病理画像とは別な画像を見せても正解するので、単に暗記だけで答えているわけではなく、ちゃんと悪性の画像パターンを認識しているということになります。その優秀なハトにどうやって良性と悪性を区別したのか、聞いてみたいですが、彼らは「だって、これで食べていかなきゃならなんだもん」と答えるかもしれませんね(笑)

図:大腸癌の病理組織像。正常の部分と異なる点が多いです。

大腸癌の病理組織像。正常な細胞と異常な細胞の違いが示されている。

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