固定について
- 教授
- 宇月 美和
- うづき みわ
- 病理学、人体病理学、リウマチ・膠原病の病理、遠隔病理診断、細胞診断
ヒトの身体から採取される検体には細胞やタンパク質などが含まれています。それらは室温で放置すれば変性や腐敗がすすみます。検体に含まれる細胞を観察したりより詳しく調べるためには、それらの細胞を長期間保存できるように「固定」という操作をおこないます。食べ物が長持ちするように熱を加えたり、乾燥させたり、塩漬けにしたり、凍らせたりしますが、それをイメージすると分かりやすいかもしれません。実際には目的に応じてアルコールやホルマリンなどの固定液を使ったり、マイクロウェーブ(電子レンジ)を使ったり、液体窒素で凍らせたりします。これらの検体は薄く切りやすいようにパラフィン(ろう)や凍結用のコンパウンドの中に埋め込んで保存され、最終的には染色液で細胞に色を付けて観察します(生の細胞は赤血球以外はほぼ無色です)。保存状態が良ければ50年前の検体でも細胞の観察が可能です。逆に固定されずに放置されていたり、生理食塩水内に入れられていた検体は変性してしまいます。せっかく検査や手術で採取された検体でも変性してしまうと、細胞の正確な観察は不可能になりますし、固定時間が長すぎてしまうと免疫染色などの特殊染色が難しくなるので、過固定(固定しすぎ)も注意が必要です。
*写真は適切に固定されたヒトの肝臓を顕微鏡で観察した写真です。
