血液診療と臨床検査
- 教授
- 小川 一英
- おがわ かずえい
- 血液検査学、血液内科学、白血病細胞学
貧血や、白血病などの血液腫瘍を診療したり、難治性の血液疾患患者に骨髄移植などの移植治療を行うのが血液内科の主な仕事です。血液内科が扱う疾患は、他の診療科が扱う疾患と比べてやや異なる点があります。それは血液疾患のほとんどは肉眼で見て診断することができないという点です。例えば胃腸にできるポリープや潰瘍はカメラを介してではありますが、病変を肉眼で確認できますね。しかし血液の中にある血液腫瘍を肉眼で見ることはできませんので、診断は医師や臨床検査技師が顕微鏡で腫瘍細胞を見つけるところから始まります。腫瘍以外でも、貧血なども血液検査をしないと診断をすることは不可能です。というわけで血液診療は臨床検査がリアルタイムでできないところでは成り立たず、医師は検査室から出てくる検査データを信用して診療にあたりますし、臨床検査技師は正確なデータを医師に提供する必要があります。血液診療を受ける患者さんのほとんどは診察前に血液検査を受けており、医師はそのデータを確認して診療にあたります。医師の触診や聴診といった普遍的な診察技術より検査データの方がより患者さんの状態を正確に把握できるからです。ただ度が過ぎると、患者さんの病気と戦っていることを忘れ、電子カルテ上の検査データと格闘してしまい、患者さんの顔を一度も見ないまま診察が終了していた、などという笑えない話にもなりかねません。その辺りはAIがうまくサポートしてくれる時代が来るかもしれませんね。