FUKUSHIMA MEDICAL UNIVERSITY
名古屋大学大学院医学研究科の永津俊治教授の研究室(生化学第一)に在籍し(昭和62年ー平成2年)、チロシン水酸化酵素やドーパミンβ水酸化酵素など、神経伝達物質カテコールアミンの生合成に関わる酵素群の遺伝子構造やその発現制御の研究を行いました。
大学院修了後、名古屋大学医学部助手を経て、平成3年に藤田保健衛生大学総合医科学研究所(神経化学部門・助手、講師)に異動し、トランスジェニックマウスやノックアウトマウスを利用して、カテコールアミン伝達の脳や生理機能に関する研究を行いました。この一連の研究の中で、イムノトキシン細胞標的法の開発に至りました。
平成8年に、奈良先端科学技術大学院大学(遺伝子教育研究センター・助教授)に異動し、イムノトキシン細胞標的法を応用した皮質ー基底核回路の研究をはじめ、ドーパミンニューロンを可視化したマウスの作製などの研究を行いました。
平成11年に、福島県立医科大学医学部(生体機能研究部門・教授)に移り、現在に至っています。ここでは、研究内容の紹介に示したように、報酬と反応の関係を学習するオペラント行動を媒介する神経回路の研究に着手し、この行動を制御する線条体投射路や入力路の役割を明らかにすることができました。入力路の研究に関しては、高頻度な逆行性遺伝子導入を示すHiRet/NeuRetベクターの開発が有益なツールとなりました。
また、オペラント行動の解析にあたっては、ラットの行動課題を用いるようになり、よる高度な学習課題や電気生理学の導入が促進されました。今後は、これまでの実績をさらに発展させ、遺伝子改変技術を新しい神経回路の機能操作の技術開発に繋げるとともに、これらの技術を応用して行動の選択や柔軟性を媒介する神経回路のメカニズムの解明を目指したいと考えています。また、本年度より新しい研究領域も始まりますが、この研究では、動物が行動を適応させるために、脳の回路を変化させる機構の研究に取り組みます。
脳の機能は、動物のライフサイクルにとても重要な役割を持ちますが、まだその機序についてはわかっていないことが多いです。われわれの研究分野に興味を持ち、研究をしてみたいという若い研究者や大学院生の方の参加を期待しています。