論文題名 | NIRF constitutes a nodal point in the cell cycle network and is a candidate tumor suppressor. |
NIRFは細胞周期ネットワークの中心に位置し,癌抑制遺伝子の候補である。 | |
著 者 | 森 努、池田大祐、福島俊彦、竹之下誠一、高地英夫 |
雑誌名 | Cell Cycle |
発行日 | 2011年10月1日 |
巻(号)、ページ | 10(19):3284-99 |
要 旨 | |
生体の分子間ネットワークには,多数の相互作用因子を持つHubタンパクが少数存在し,ネットワークの完全性と機能を保つ重要な役目を果たしている。細胞周期の制御ネットワークは,多数の機能モジュール間の相互作用により広範な細胞機能を調節している。逆にその異常は,細胞機能の多岐にわたる障害から細胞癌化をひき起こす。しかし,モジュール相互の機能調整が,いかなるネットワーク構築と分子的基盤で支えられているのかは不明である。
森らが発見したNIRFは細胞周期停止を起こすユビキチンリガーゼであり,本研究において複数のcyclin,pRB,p53と相互作用すること,cyclin D1とE1を共にユビキチン化することを示した。NIRFが形成するネットワークの特性を,システムバイオロジーの手法を用いて解析したところ,NIRFは細胞周期ネットワークのみならず細胞内情報ネットワーク全体において中心的位置を占める分子であること,多数の機能モジュール間の機能調整に関与する分子群(Intermodular Hub)であることが判明した。 Intermodular Hubは,発癌に関わる頻度の高いことが知られているが、実際にNIRF遺伝子は多種類の癌で欠失していた。特に重要なのは,肺の非小細胞癌でNIRFを標的とする微小欠失が発見されたことである。この欠失部位に大腸癌と関連するSNPが存在することは,NIRFが癌と関係する可能性を強く示唆する。 以上の知見は,NIRFが細胞周期ネットワークの中で際だった位置を占めるタンパクであることと,新規の癌抑制遺伝子であることを強く示唆している。 〔詳細紹介ページ〕 ● 生命科学部門 森努准教授「NIRFプロジェクト」共同研究グループ 細胞内情報ネットワークの中心因子 「NIRF」 を発見 ― 癌などのヒト疾患に関連する遺伝子 ― 米国 科学雑誌 「Cell Cycle」 2011年10月号 オンライン版 (10月1日付 〔日本時間10月2日〕) (2011.10.05) |