- 冨田 湧介 (とみた・ゆうすけ)
- 医学部 循環器内科学講座 大学院生
- 研究グループ
- 冨田湧介、安齋文弥、三阪智史、小河原崚、市村祥平、和田健斗、君島勇輔、横川哲朗、竹石恭知
今回の受賞について
学会について
「International Society for Heart Research」は、心臓の代謝・構造および機能に関する研究を推進し、循環器学の発展に寄与すると共に、国際心臓研究学会の事業に協力することを目的としている。
賞について
40歳未満のInternational Society for Heart Researchの会員を対象に、YIA選考委員会により選出される。学術集会へのYIA応募演題の中から、演題抄録を対象とした一次審査と講演による最終審査により選考される。
概要
タンパク質の翻訳後修飾は、プロテオミクス上の多様性を増大させる生物学的メカニズムであり心筋リモデリングの予防や回復のための治療標的でもある。N末端グリシンにミリスチン酸が結合するN-ミリストイル化は、N-ミリストイル転移酵素 (NMT) によって触媒され、細胞内シグナル伝達に関与しタンパク質の品質管理で重要である。しかし、心筋細胞におけるN-ミリストイル化の機能的意義は未だ解明されていない。そこで我々は、心不全発症におけるNMTの役割を明らかにするために圧負荷心不全モデルマウスに対してアデノ随伴ウイルス9を介した心臓NMTのノックダウンを行ったところ、心機能障害、リモデリング、死亡率が悪化した。次にクリックケミストリーを用いた心筋細胞の網羅的N-ミリストイル化解析により、内因性レベルで103個のN-ミリストイル化基質タンパク質を同定した。また、心筋細胞肥大に関与するアンギオテンシン II (Ang II) 刺激によって最も減少したN-ミリストイル化タンパク質の1つであるMARCKSに着目した解析では、N-ミリストイル化はMARCKSの細胞膜への局在を標的とし、CaMKIIとHDAC4のリン酸化、ヒストンH3のアセチル化を阻害することにより、Ang II誘発性心肥大を制御していることを明らかにした。最後に、アデノ随伴ウイルス9を介した心臓特異的なNMTの遺伝子導入により、圧負荷心不全モデルマウスで心機能障害が有意に減少することが示された。本研究により、心筋細胞のN-ミリストイル化が病的な心肥大や心不全に必須の役割を果たすことが明らかになった。N-ミリストイル化を標的とすることは、心臓リモデリングを防ぐための治療アプローチとして心不全の新規治療戦略となる可能性がある。
連絡先
公立大学法人福島県立医科大学 医学部 循環器内科学講座
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