
- 叶多 諒 (かのうだ・りょう)
- 消化管外科学講座 大学院生
- 中嶋 正太郎(なかじま・しょうたろう)
- 消化管外科学講座 准教授
- 研究グループ
- 叶多諒、中嶋正太郎、岡山洋和、金田晃尚、千田峻、松本拓朗、斎藤勝治、菊池智宏、丸山裕也、鈴木博也
三村耕作、齋藤元伸、花山寛之、坂本渉、門馬智之、佐瀬善一郎、河野浩二
概要
論文掲載雑誌:「Scientific Reports」(2025年6月2日)
大腸癌において、腫瘍細胞内のcyclic GMP-AMP synthase (cGAS)–stimulator of interferon genes (STING)経路は、抗腫瘍免疫応答を活性化し、免疫チェックポイント阻害療法の効果を高める上で重要な役割を担っています。がん関連線維芽細胞(cancer-associated fibroblasts:CAF)は、大腸癌の腫瘍微小環境における主要な構成要素であり、これまでの多くの研究において、抗腫瘍免疫応答を抑制する働きがあることが示されています。しかし、CAFが腫瘍細胞におけるcGAS-STING経路の発現に与える影響については、これまでほとんど明らかにされていませんでした。
本研究では、大腸癌組織において腫瘍細胞内のcGAS-STING発現が、免疫抑制性のCAFマーカーの1つであるversican(VCAN)の間質における発現と逆相関することを見出しました。また、ヒト大腸癌組織由来の初代培養CAFを用いた共培養実験により、CAFが大腸癌細胞株におけるcGASおよびSTINGの発現を抑制することが明らかとなりました。さらに、VCANおよびFN1 (fibronectin 1)を発現するCAFがこの抑制に関与する可能性が示唆されました。
これらの結果は、免疫抑制性のCAFが大腸癌において腫瘍細胞内のcGAS-STING経路の発現抑制に関与している可能性を示しています。したがって、特定のCAFを標的とすることで腫瘍細胞のcGAS-STING発現を回復させ、大腸癌治療の有効性を高める新たな戦略となり得ると期待されます。(叶多 諒)
連絡先
公立大学法人福島県立医科大学 医学部 消化管外科学講座
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