福島県立医科大学 研究成果情報

国内学会英文機関誌「Annals of Nuclear Medicine」掲載(2025年4月オンライン)(2025-05-12)

Comparison and cutoff values of two amyloid PET scaling methods: centiloid scale and amyloid-β load

2種類のアミロイドPET定量法の比較とカットオフ値:センチロイドスケールとamyloid-β load

山國 遼 (やまくに・りょう)
放射線医学講座 病院助手


伊藤 浩(いとう・ひろし)
放射線医学講座 教授
        
研究グループ
山國 遼(福島県立医科大学 放射線医学講座)、阿部 十也(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)、右近 直之(福島県立医科大学 先端臨床研究センター)、松田 博史(福島県立医科大学 生体機能イメージング講座)、髙野 晴成(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)、澤本 伸克(京都大学 医学系研究科 近未来型人間健康科学融合ユニット)、島 淳 (京都大学大学院 医学研究科 近未来システム・技術創造部門)、森 湧平(福島県立医科大学 神経精神医学講座)、関野 啓史 (福島県立医科大学放射線医学講座)、石井 士朗 (福島県立医科大学 放射線医学講座)、福島 賢慈 (福島県立医科大学 放射線医学講座)、花川 隆 (京都大学 医学研究科 脳統合イメージング分野)、伊藤 浩 (福島県立医科大学 放射線医学講座)、Parkinson’s and Alzheimer’s disease Dimensional Neuroimaging Initiative Group(PADNI, https://padni.org/)

概要

論文掲載雑誌:「Annals of Nuclear Medicine」(2025年4月26日)


 近年、疾患修飾薬の登場とともに、正確なAlzheimer病(AD)の診断が重要である。脳へのアミロイド沈着がAD診断の要であり、アミロイドPETはその主要な役割を果たしている。アミロイドPETは視覚所見による陰性・陽性判断が臨床では主に用いられるが、各種の定量評価も提唱され、近年ではセンチロイドスケール(CL)が主たる評価方法となっている。他にも、amyloid-β load (AβL, AmyloidIQ)と呼ばれる手法も提唱されている。しかし、どの手法がより良い手法なのかは未だ不明である。そこで、本研究ではCLとAβLを直接比較し、2手法の相関や読影結果に対する予想能力について比較検討した。

 本研究では本邦で実施されたParkinson病やADを対象とした大規模コホート研究であるParkinson’s and Alzheimer’s disease Dimensional Neuroimaging Initiative (PADNI, https://padni.org/)に参加した281名(男性 144 名、平均年齢 69.6 歳)のアミロイドPET、MRI、認知症スケールであるCDRを抽出した。CLは小脳を基準として計測し、AβLは非特異的結合と特異的結合の2種類の画像を使用しボクセル回帰を用いて測定された。視覚読影ではランダムに選択された5名の放射線科医によって、陰性/陽性に分類された。2名の読影に相違があった場合、残りの3名がランダムに選択され、3人目の読影により陰性/陽性に分類された。さらに、CLと読影結果に矛盾が生じている症例、つまりCLが10未満であるが視覚的陽性である症例と、CLが30を超えるが視覚的陰性である症例に対して、2人の核医学専門医により追加の読影が実施された。相違があった場合は議論を通じて解決され、これを最終読影診断とした。

 結果として、CLとAβLは線形相関した (CL=AβL×2.10-9.40、R2=0.923)。ROC解析では、最終読影診断の予測にはCL(AUC=0.996)とAβL (AUC=0.997)がともに有効であり、差も認めなかった(P=0.882)。カットオフ値はCLが23.3、AβLが15.6であった。認知症症状の無い参加者(G-CDR=0)をルールアウトする場合、CL(AUC=0.687)とAβL(AUC=0.667)がともに有効で、有意差は認めなかった(P=0.379)。カットオフ値はCLが11.9、AβLが11.6であった。ガウス混合モデルを使用すると、正常群の平均とSDはCLで-2.5(SD=6.5)、AβLで3.7(SD=3.0)となり正常上限はCLで10.4、AβLで9.7と算出された。

 本研究により、CLとAβLがともにAD診断に有用で、互いに非劣性であることが示された。また、本邦の大規模データを用いて、正常値やカットオフ値を提唱することができた。(山國 遼)


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