福島県立医科大学 研究成果情報

欧州科学誌「Metabolites」掲載(令和3年11月14日)(2022-01-07)

L-theanine protects bladder function by suppressing chronic sympathetic hyperactivity in spontaneously hypertensive rat

慢性的な交感神経系活動亢進モデルラットを用いたL-テアニンによる下部尿路機能保護効果の解明

松岡 香菜子 (まつおか・かなこ)
医学部 泌尿器科学講座 助手
        
研究グループ
泌尿器科学講座
松岡 香菜子、赤井畑 秀則、秦 淳也、 丹治 亮、本田 瑠璃子、小名木 彰史、星 誠二、 胡口 智之、
佐藤 雄一、渡辺 英津子、平木 宏幸、 片岡 政雄、小川 総一郎、小島 祥敬

概要

論文掲載雑誌「Metabolites」(令和3年11月14日)


 頻尿や尿失禁などの下部尿路症状は加齢とともに頻度を増し、しばしば問題になります。加齢に伴い交感神経系は活性化され、高血圧や動脈硬化だけでなく、下部尿路症状の原因の一つと考えられています。L-テアニンは茶葉に含まれるアミノ酸で、緑茶によるリラックス効果をもたらす成分として知られています。L-テアニンは交感神経系の亢進を抑制させるため、私達はL-テアニンの習慣的な摂取が下部尿路症状を予防するのではないかと考えました。

 本研究では、慢性的な交感神経系の亢進を認めるモデルラット(高血圧自然発症ラット:SHR)に市販の緑茶に含まれる程度のL-theanine溶液を自由飲水させることで、下部尿路機能の変化を解析しました。すると、水を投与されたSHRと比べ、L-テアニン溶液を投与されたSHRでは、明らかな排尿回数の減少や蓄尿量の増加、膀胱平滑筋収縮力の増加を認めました。L-テアニンによる交感神経系亢進の抑制は、膀胱の酸化ストレスレベルを低下させ、下部尿路機能の保護に関与する可能性が考えられました。

 本研究の成果は、L-テアニンの経口投与が慢性的な交感神経系の亢進状態による下部尿路機能を保護することを示した初めての報告になります。本研究で用いたL-テアニンは、ヒトに換算した場合でも日常的に摂取可能な量であり、下部尿路症状予防のための新しい選択肢を示した研究成果であると考えています。今後この研究成果が発展すれば、下部尿路症状の予防薬の開発にもつながる可能性があります。


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