福島県立医科大学 研究成果情報

欧州雑誌「ESC Heart Failure」掲載(2020年10月)(2020-11-17)

B-type natriuretic peptide is associated with post-discharge stroke in hospitalized patients with heart failure

心不全患者における血中BNP濃度と退院後の脳卒中発症に関する検討

寶槻 優 (ほうつき・ゆう)
医学部 循環器内科学講座 大学院生
        
研究グループ
寶槻 優、佐藤 悠、義久 精臣、渡邊 孝一郎、君島 勇輔、喜古 崇豊、横川 哲朗、阿部 諭史、三阪 智史、佐藤 崇匡、及川 雅啓、小林 淳、八巻 尚洋、国井 浩行、中里 和彦、石田 隆史、竹石 恭知
(循環器内科学講座)

概要

論文掲載雑誌:「ESC Heart Failure」(2020年10月)


 B-type natriuretic peptide(BNP)は心臓に圧負荷や容量負荷を生じた際に心室筋から分泌されるペプチドであり、心不全の診断や病態把握に汎用されているバイオマーカーです。しかし、心不全患者におけるBNPと脳卒中との関連については検討されていません。本研究では心不全患者における血中BNP濃度と脳卒中発症に関して検討を行いました。当院へ入院した心不全患者1,803名を対象に調査しました。経過観察中に脳卒中を発症した脳卒中発症群69名と発症しなかった未発症群1,734名の2群に分類し、両群における患者背景、脳卒中の予測因子に関して検討を行いました。脳卒中発症群では、CHADS2スコアが高値であり、心房細動、高血圧や慢性腎臓病の割合が高率であり、血液検査ではBNPが有意に高値でした。多変量COX比例ハザード解析では、BNPは新規脳卒中発症の独立した予測因子でした。また、survival classification and regression tree解析により脳卒中予測に関するBNP値の適正なカットオフ値を算出すると187.7pg/mLでした。Kaplan-Meier 解析では、BNP高値群(>187.7 pg/ml)では退院後の脳卒中発症が有意に高率でした。さらに、c statistics では、脳卒中発症に関する既存のリスクスコアであるCHADS2スコアに、BNP値を追加することで、予測能の有意な改善が得られました。

 BNPは心不全患者における脳卒中の予測因子であり、既存のCHADS2スコアと併用することでさらに有用となる可能性が示唆されました。


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