福島県立医科大学 研究成果情報

英国科学誌「Psychoneuroendocrinology」掲載 〔平成28年6月〕(2016-06-01)

Variants in the DRD2 locus and antipsychotic-related prolactin levels: A meta-analysis

ドパミンD2受容体における遺伝的変異と  抗精神病薬によるプロラクチン上昇との関連についてのメタ解析

三浦 至 (みうら・いたる)
神経精神医学講座 講師
        
研究グループ
三浦 至、Jian-Ping Zhang、萩 勝彦、Todd Lencz、John M.Kane、矢部博興、Anil K.Malhotra、Christoph U.Correll

概要

論文掲載雑誌: 「Psychoneuroendocrinology」 〔2016 Jun. 6〕 抗精神病薬の副作用であるプロラクチン値上昇と、ドパミンD2受容体(DRD2)遺伝子多型との関連についての初のメタ解析論文である。 メタ解析の結果、全サンプル(n=1034)では血中プロラクチン値とDRD2遺伝子多型(Taq1A, -141C Ins/Delの2多型)との関連を認めなかったが、サブグループ解析の結果統合失調症群ではTaq1A遺伝子多型とプロラクチン値との有意な関連を認めた(Hedges' g=0.250, 95% CI=0.068-0.433, p=0.007)。 抗精神病薬は共通する薬理作用であるDRD2の阻害作用を通して用量依存性にプロラクチン値の上昇を引き起こすが、この変化については臨床的に個人差も大きい。本研究では統合失調症群でDRD2のTaq1A遺伝子多型のA1アレルを持つ群では持たない群に比べて有意にプロラクチン値が高いことが明らかとなり、この個人差を説明する遺伝的要因となっている可能性が示唆された。 Taq1A遺伝子多型はDRD2の脳内発現に影響を与えることが知られており、今回の結果は抗精神病薬による高プロラクチン血症について、薬理遺伝学的手法を用いた副作用予測・回避の可能性を示すものである。

(三浦 至)


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