福島県立医科大学 研究成果情報

英国科学誌 「Carcinogenesis」(電子版) 掲載 〔平成28年6月〕(2016-06-09)

Stromal VCAN expression as a potential prognostic biomarker for disease recurrence in stage Ⅱ-Ⅲ colon cancer

癌間質におけるVCAN発現はステージ2-3大腸癌術後再発リスク判定のための予後バイオマーカーとなる

千田 峻 (ちだ・しゅん)
医学部 器官制御外科学講座 博士研究員
        
研究グループ
千田峻、岡山洋和、野田勝、斎藤勝治、中島隆宏、青砥慶太、早瀬傑、門馬智之、大木進司、河野浩二、竹之下誠一

概要

論文掲載誌: 「Carcinogenesis」  2016 Jun.9 [Epub ahead of print 「がん」はがん細胞だけでなく、周囲をとりまくがん間質、つまり線維芽細胞や血球・免疫細胞、血管やリンパ管内皮細胞、細胞外基質などで構成されています。これら微小環境はがん細胞との相互作用によりがんの浸潤・転移と深く関わっていることが近年着目されています。 今回の研究では手術により根治切除されたステージ2およびステージ3の大腸がんを対象としています。ステージ2・3の大腸がんは手術治療が適応となる一方、手術後の個々の再発リスクに応じた補助化学療法やサーベイランスの個別化が極めて重要であるからです。 我々は大規模な複数の網羅的遺伝子発現情報(マイクロアレイ)を解析し、タンパク発現解析に応用することにより、がん間質におけるVCAN遺伝子発現が手術後の再発と強く関連すること、VCAN遺伝子ががん間質においてがん関連線維芽細胞(Cancer-associated fibroblasts: CAFs)に特異的に発現することなどを見出しました。これらの知見は独立した5つの大腸がんコホート、計900例を超えるステージ2・3の大腸がんサンプルを用いて検証することで極めて高い再現性が示されています。 本研究によりVCAN遺伝子発現が術後再発の高リスク症例を抽出するバイオマーカーとして臨床応用が期待されることと同時に、大腸がんにおける対微小環境戦略の重要性が示唆されていると言えます。 (千田 峻)

連絡先

公立大学法人福島県立医科大学 医学部 器官制御外科学講座   助教 / 岡山 洋和
電話 024-547-1259 / FAX 024-548-3249
講座ホームページ http://www.fmusurg.com/
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