福島県立医科大学 研究成果情報

第13回インテリジェント・コスモス 奨励賞 〔平成26年5月受賞〕(2014-05-19)

新たな組換えDNAウイルス株作成法を用いた   サイトメガロウイルス臨床分離株の解析

生田 和史 (いくた・かずふみ)
福島県立医科大学 医学部 微生物学講座 講師
        

今回の受賞について

「インテリジェント・コスモス奨励賞」は、公益財団法人インテリジェント・コスモス学術振興財団(宮城県仙台市)が、東北インテリジェント・コスモス構想 の一環として、広く学術振興を図るために、科学技術分野において独創的で優れた研究テーマを持つ、将来有望な若手研究者 に対し授与する賞です。
東北7県の大学等に所属している40歳(医歯薬系は42歳)以下の若手研究者を対象としており、平成14年度から実施されています。

これまで本学では、平成18年度に細胞科学研究部門 初沢清隆 助教授 (現鳥取大学教授)、平成20年度に解剖・組織学講座 亀高 諭 講師(現名古屋大学教授)、平成22年度に腎臓高血圧・糖尿病内分泌内科学講座 谷田部淳一博士研究員、平成23年度に生化学講座 苅谷慶喜 学内講師、平成24年度に生体機能研究部門 加藤成樹 講師が受賞しています。(所属・職階は受賞当時のものです)
今年度は10名の受賞者が選ばれ、5月19日に授与式が仙台市にて行われました。本学からは細胞科学研究部門の井上直和 准教授と微生物学講座の生田和史 講師が選ばれました。

 

概要

「先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染」 は出産300例に1例の頻度で起こっており、そのうち10人に1人は出生時に異常が認められます。また出生時に異常がなくとも、成長に伴って精神発達遅滞や聴覚障害と診断される場合もあります。これまでにウイルス感染様式の解析や感染モデルマウスによる検討を行ってきました。

CMVが感染できる細胞種は様々であり、どのような細胞に感染するのかによって、病気の種類が決定される可能性があります。感染細胞指向性を決定するウイルス遺伝子特定のためには、従来法では感染細胞から大量のウイルスDNAを得る必要があります。しかしCMVの臨床分離株は増殖が極めて遅く、必要なDNA量を得ることが困難です。 本研究ではウイルス培養に依存しない方法でウイルスDNAを再構築し、増殖能の低いウイルスでも迅速かつ確実に組換えウイルスを作成出来る手法の確立を目指しています。増殖が遅くとも容易に遺伝子組換えウイルスが作成出来るようになれば、臨床分離CMV株の解析が飛躍的に進みます。その結果から感染細胞指向性とCMV関連疾患の関係を明らかにし、先天性CMV感染の病理を理解する情報が得られることを期待しています。

(生田和史)


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