論文題名 | Selective neural pathway targeting reveals key roles of thalamostriatal projection in the control of visual discrimination. |
選択的神経路ターゲティング技術は視床線条体路が視覚弁別学習の制御に必須の役割を担うことを示す | |
著 者 | 加藤成樹、倉持真人、小林憲太、深堀良二、内ヶ島基政、渡辺雅彦、筒井雄二、小林和人 |
雑誌名 | J Neurosci. |
発行日 | 2011年11月23日 |
巻(号)、ページ | 31(47):17169-79 |
要 旨 | |
線条体は学習行動の獲得や実行を媒介する脳領域で、そこには大脳皮質や視床の多くの領域から情報が入力する。しかし、それぞれの領域からの入力が学習のプロセスにどのような役割を担っているかについては不明であった。我々は、脳内の特定の神経路を除去する新規の分子遺伝学的技術を開発し、視床束傍核から線条体に入力する神経路の持つ行動生理学的な役割の研究に応用した。 イムノトキシン受容体遺伝子をコードする高頻度逆行性遺伝子導入ベクター(神経終末より導入され、軸索を逆行性に輸送された後、細胞体において目的の遺伝子の発現を誘導する)をマウスの線条体に注入することによって、この領域へ入力する神経路に導入遺伝子の発現を誘導した。 次に、視床束傍核にイムノトキシンを注入することによって、視床線条体路の選択的な除去を誘導した。視床線条体路の除去は、視覚刺激に依存してレバーを押し分ける弁別学習課題の獲得と実行の障害を引き起こした。また、獲得時においてレバーを押す反応時間の遅延も伴った。一方、この経路除去は、自発運動、アンフェタミン誘導性の運動亢進作用、運動学習などの線条体を必要とする別の行動においては顕著な障害を示さなかった。これらの結果は、束傍核に由来する視床線条体路は、刺激に応答して正しい行動を弁別する学習行動の獲得と実行に重要な役割を持つことが明らかとなった。 本研究で開発した選択的な神経路ターゲティング法は、脳内の他の神経路の除去にも活用でき、特に、遺伝子改変動物の作製が困難な実験動物種おいても適用できるため、今後、脳機能を媒介する神経回路の機構を解明するために重要なアプローチを提供する。 |