菊地臣一 コラム「学長からの手紙  〜医師としてのマナー〜

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91.組織には窓際族も必要である

窓際族というのは、我々組織に属している人間にはイメージが悪い言葉です。しかし、古今東西どんな組織にもある一定の割合で窓際族はいるのです。前に書いたかもしれませんが、鼠の世界でさえ駄目な鼠30%、どうでもいい鼠40%、優秀な鼠30%の配分で構成されています。組織としての機能を高めようと30%の駄目鼠を排除すると、残された7匹の鼠の中で2匹の優秀な鼠、どうでもいい3匹の鼠、そしてまた新たに駄目鼠になった2匹に区分けされるのです。つまり組織というものを作って生きている生き物にとって、窓際族は必要なのです。

優秀な人間は、駄目な人達を見て優秀だと自ら思い、或いは他人から評価されるのです。「優秀だ、あいつは仕事が出来る」という評価は何かとの比較によって初めて出来るわけです。ですから比較されるものが必要で、そういった意味では窓際族はなくてはならないのです。私自身、出来ているかどうかはわかりませんが、常日頃心掛けていることは、「窓際族も必要なんだ、組織には必要悪なのだ」ということです。全部が精鋭部隊ならそれは恐ろしいことだし、全部が精鋭部隊なら必ずその内の3分の1は窓際族にされてしまうのです。

また、どんな頼りのない男にもその男を頼って生きている家族がいます。更に自分も時と場合によっては、その窓際族と目されるかもしれません。しかもその1人1人の男にはその男の人生の他に家庭もあるのです。ですから腹が立っても、心の片隅に、そういう人間が必要なんだ、あるいは時と場合によっては何時自分もそういう立場になるかわからないという気持ちで組織の中で動くと、少しは人に対する共感や人に対して温かい目を持って接することができるのではないかと思います。

 

 

 

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