ロールモデル集
後藤 あや 総合科学教育研究センター 教授

子どもがいくつになっても、「こういう時に他の人はどうしているのか」が気になります。子どもがオンライン授業になってずっと家にいる時、どうしたらいいのか。子どもが独り立ちしたら何かチャレンジしたいと思うけど、モチベーションをどう保って、どう準備しようか。日常のことから長期的な展望まで色々誰かに聞きたいことはあるけれど、そんなに細かく聞くのも気が引けますし、誰にいつしゃべりかけるかタイミングなども考えていると、結局はそもそも人によって事情や考え方が違うから聞いても…と、もやもやとしたまま時が過ぎていきます。
この状況で、ロールモデル紹介の原稿依頼を受け取りました。子どもが乳幼児の時はこのような依頼をいただくと迷わず、日々の様子や工夫を書いたり話したりしてました。個人的なそんな時期も過ぎて、社会全体の時代も進んで、家庭の中の誰か、社会の中で特定の集団が頑張る構図を描くのは、少し違うと思うようになっています。そこで、少し調べました。
若手研究枠の科研費を取得した医師が対象の調査結果によると、ワークライフバランスの取れているメンターがいる人は、仕事面での燃え尽きの程度が低いそうです(BMC Med Educ 2020; 20: 178)。また、ロールモデルの提示は、医学生(Med Teach 2013;35:e1422-36)や看護学生(J Clin Nurs 2017; 26: 4707-4715)の職業意識の確立に有用とも言われています。McGill大学のCruessらは、メンターとロールモデルは異なり、メンターは学生に質問を投げかけたり助言を提供したりすることにより指導者として導き、ロールモデルは “inspire and teach by example, often while they are doing other things”と表現しています(BMJ 2008; 336)。このinspireというのは、狙ってできるものではないからとても難しいと思います。とりあえず、楽しんでいることや仕事のやりがいを書いてみます。
最近の日常で楽しいのは、成長した子どもとの会話です。コロナで家にいることも多く、たっぷり話せています。宿題や授業の様子を覗くのも中々面白いです。研究については、大学院の頃からデータ分析や論文執筆がとにかく楽しくて、子どもが小さいときには「ママだけ時間制限なくゲームしてる!」と怒られました。社会医学系専門医としての地域での仕事は、自治体の受動喫煙防止条例の作成、健康情報を分かりやすく伝えるヘルスリテラシー研修会の実施、母子保健事業の評価など様々ありますが、与えられた役割には一つ一つできるだけ丁寧に取り組むことを心がけてます。あまり得意でない仕事の時は事前に勉強が必要になりますが、それがまた新しい発見や次の仕事につながります。国際保健の研究は渡航できないので厳しい状況ですが、出張がない間にできることを進めてます。例えば、アジア3か国の小学校での健康教育は、教材づくりやネットワークの構築などをしています。時差の調整が大変ですが、日替わりで違う国の人達とオンラインで打ち合わせができる最近は、とても便利です。ちょっと旅行した気分にもなれます。
最後になりましたが、原稿や講演依頼の際に提出しているプロフィールです。「山形大学医学部卒、ハーバード公衆衛生大学院で公衆衛生修士、山形大学で医学博士を取得。ポピュレーションカウンシル・ベトナム支部勤務(11か月)、2002-16年福島県立医科大学公衆衛生学講座、2012-13年ハーバード公衆衛生大学院武見フェロー(10か月)を経て、2016年より現職。専門分野は、家族計画、育児支援、ヘルスリテラシー、国際保健。」その時々の私なりに考えて、進学や異動をしてきました。素晴らしいメンターやロールモデル、仲間にも恵まれました。子どもの頃を含めるとこれまでにアメリカに3回滞在して、博士課程修了後はベトナムでも働いて、そういった海外での経験が特に自分のモチベーションにつながっているように感じます。修士課程の時に家族で留学しているクラスメートの様子をみて私も次は!と思い、10年後に実現できたのは良い思い出です。最後のアメリカ生活からそろそろ10年です。また自分なりのチャレンジを模索中です。
この原稿のお題は、「後輩へ伝えたいこと」でした。もやもやした気持ちで書き始めましたが、振り返ってつらつらと書き出すだけでもモチベーションの再発見になりました。皆様も是非、日常生活の楽しみ、仕事のやりがい、将来的な展望など、自分なりのモチベーションの源を大事にしてください。
研究室のホームページ
https://aya-goto.squarespace.com/
令和4年度 ロールモデル集 ~福島県立医科大学の後輩へ伝えたいこと~
(所属・役職は執筆当時)
令和3年度 ロールモデル集 ~福島県立医科大学の後輩へ伝えたいこと~
(所属・役職は執筆当時)
令和2年度 ロールモデル集 ~福島県立医科大学の後輩へ伝えたいこと~
(所属・役職は執筆当時)