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大学院学位記授与式 学長式辞  (令和5年9月29日)

大学院学位記授与式の様子1 大学院学位記授与式の様子2 大学院学位記授与式の様子3

本日ここに学位を授与された、医学研究科博士学位取得者17名、看護学研究科修士学位取得者4名の計21名の皆さん、福島県立医科大学の教職員を代表して、心からお祝いを申し上げます。あわせて、本日の学位記授与式を迎えるまで、ご家族および関係者の皆様よりいただいた数々の多大なご支援に対し、厚く御礼申し上げます。
2020年以来、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のための行動制限により、厳しい環境下にあった皆さんの履修の道のりが、非常に大変であったことは容易に推察できるものでありあます。そのような中、今日を迎えるまでの皆さんの努力に対して深く敬意を表したいと思います。そして、本日より医療のプロフェッショナルとして、私たちの仲間に加わることを心より歓迎いたします。

さて、記念すべきこの日に、皆さんにお伝えしたいことがあります。それは、プロフェッショナルであれば変化に対して常に「しなやか」であれ、ということです。今さらのような話に聞こえるかもしれませんが、敢えてこのことを皆さんに喚起したいと思います。なぜなら、近年の私たちの身の回りの変化が、そのスピードも内容も、これまで経験したことがないような速さと大きさで進んでいるからです。例えば、最近話題になっている生成系AI、Chat GTPは1億人のアクティブユーザーを獲得するのにわずか2か月しか要さなかったそうです。同じ数のユーザーを獲得するのにFacebookで4年6か月、インスタグラムで2年6か月かかったといわれており、それと比較すれば、普及のスピードは驚異的といえます。そして、生成系AIの普及がはらむリスクは核兵器に匹敵すると指摘する知識人もいるほど、その影響力は大きなものです。そのような現状の安定を揺るがすような新しい変化に対して、私たち人類は、深く考え、検証し、対応法を確立する時間的、精神的余裕がないほどの変化が普通に起きているのが今の社会です。
しかし、だからと言って私たちが硬直してしまってはなりません。変化に無関心でいることは、自らの進化、社会の進化を止めるということと同じ意味を持ちます。変化に向き合い、どう対応するかを考え、判断することは避けては通れないのです。もし変化に対して熟慮ができない場合は、“走りながら考える”しかありません。当然、その場合の判断は暫定的なものです。その後の状況を見て判断を変えるということもあり得ます。そこに求められるのがまさに「しなやかさ」なのです。自分の判断に固執せず、常に自分の判断に対して検証と再考を繰り返すことが重要かつ不可欠なのです。

これは医療においても同じことが言えます。あるタイミングで正しい治療法であったとしても、状況の変化に応じて方策を見直し、新たな選択の検討を迫られることは、医療の現場では日常茶飯事です。常に臨機応変を意識すること、新たな選択肢を常に探し、懐に入れておくこと、押してダメなら引いてみるという試行錯誤を諦めず繰り返すこと。「しなやかさ」とは、単に柔軟というイメージとは程遠い、とても高い意識と広い視野を必要とする資質なのです。アメリカの教育家、ウイリアム・アーサー・ウォードの言葉に「悲観主義者は風を嘆く、楽観主義者は風向きの変化を期待する、現実主義者は帆を動かす」という言葉があります。私たち医療者は常に現実を直視し、どのようなタイミングでもどのような状況でも、その時の最適、最善の判断という風を掴むべく、帆を動かす、すなわち判断を常に検証する「しなやかさ」を自らの中に忘れないようにしてください。患者さんやそのご家族、同僚の前で自らの判断を検証し、場合によっては変えることは、プロフェッショナルとして勇気のいることかもしれません。しかし、そもそも変化は起きないということの方が稀なことです。風向きは常に変わるのです。そのような中でも、患者さん中心の世界観で医療に携わり、より良い選択肢を求めるためのしなやかな判断と行動を起こせる者こそが、真のプロフェッショナルであることを心に刻んでください。
皆さんのこれからの活躍と成功を祈って、はなむけの言葉といたします。

令和5年 9月29日
福島県立医科大学
学長 竹之下 誠一

事務担当 : 教育研修支援課

学生総務係 : 電話 024-547-1972
FAX 024-547-1984
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