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大学院学位記授与式 学長式辞  (令和3年9月30日)

大学院学位記授与式の様子1 大学院学位記授与式の様子2 大学院学位記授与式の様子3

本日ここに学位を授与された、医学研究科 博士課程修了者22名の諸君に、福島県立医科大学の教職員を代表して、心からお祝いを申し上げます。併せて、本日の学位記授与式を迎えるまで、ご家族、および関係者の皆様よりいただいた数々の多大なご支援に対し、厚く御礼申し上げます。

さて皆さんは、入学以来、多くの苦労や困難を乗り越え、この日を迎えることが出来ました。ここに至るまでの努力に深く敬意を表したいと思います。これから皆さんは、医師や研究者といったそれぞれの肩書を持って社会に出ていきます。月並みではありますが、これがゴールではなく、新たなスタート地点に立ったことを改めて認識してください。 そして、新たなスタート地点に医療従事者として立つとは、常に学び続けなければならない、ということでもあります。これは言うほど容易なことではありません。科学、中でも医学の進化のスピードは目覚ましく、学んだ知識も技術も、短期間でさらに新しいものへと塗り替えられる宿命を負っているからです。私たちは医療の専門職であり続けるために、そして、より高いレベルのプロフェッショナルを目指すために、学び続け、知識をアップデートして専門性を追求する歩みを止めることはできないのです。

ただし、社会に出るということは、単に専門性を磨けばそれで良いというものではありません。世界規模で新型コロナウイルス感染症が蔓延し、「withコロナ」の時代をいかに生きるかが人類の大きな課題になっています。その影響は医療だけでなく、経済活動や文化活動にも及び、社会の在り方そのものが変化しようとしています。マスクの生活が当たり前となり、学校の集団行事は軒並み禁止され、店舗の営業時間が当然のように制限されるなど、社会の価値観が変わる、すなわちパラダイムシフトが起きているといっても過言ではないでしょう。しかし、この動きを「自分には関係ない」と見過ごさないでください。社会の形が変わるということは、医療の在り方も変わるということだからです。安定した医療の提供、着実な医学の進歩は、安定した社会の上に成り立っています。先ほどお話しした、学び続けるということも、安定した社会があってのことです。医療活動が根差している社会そのものが、変化しようとしているのですから、私たちがそのことに無関心でいるわけにはいかないのです。しかも、この変化は不可逆的、恒久的であり、社会がコロナ以前の姿に戻ることはないと思われます。だからこそ、この不可避となった変化を傍観するのではなく、いかにプラスに変えていくかという視点が私たちには求められます。
  そのために必要なことは、社会と医療の動きを、過去にも遡りながら幅広く捉え、考えることです。この変化の必然性や背景を探り、本質はどこにあるのかを掴む努力をしてください。そうすることで、医療に対する新たな社会ニーズが見えてきて、変化に前向きに対応する行動へとつながります。そして、結果として将来構想、つまりビジョンを描くことが可能になります。ビジョンのないまま闇雲に行動することは、個人であっても組織であっても、独りよがりになりやすく、社会ニーズから乖離し、孤立を招きかねません。私たちが社会としっかり噛み合った、頼られる存在となるために、社会全体を俯瞰する力、時に専門外、医学以外のジャンルにも触れ、時に歴史を紐解くなど、視野を広げることを意識してください。

さて、今年は福島県立医科大学の創基となる白河医術講議所が設置されて150年の節目の年です。白河医術講議所は、近代医学による医師の養成を目的として白河仮病院に設置されました。東北でもいち早くこの地で近代医学が教授された背景には戊辰戦争がありました。官軍、幕府軍双方の、長崎で西洋医学を学んだ軍医が、敵味方の区別なく戦傷者に医療を施したと伝えられます。彼らは単に医学の知識と技術を身に付けていただけではなく、医療が持つ使命、つまり、誰でも分け隔てなく医療を受ける権利を有することを、日本の医療の現場でいち早く示しました。
  さらに、白河医術講議所の後継となった須賀川医学校の卒業生には後藤新平がいました。彼は政府の重職を歴任しますが、その一つに、帝都復興院総裁があります。関東大震災からの復興に尽力し、今の東京の街並みの基礎を築きました。福島県立医科大学には、大災害からの復興を陣頭指揮し、成し遂げた稀有の大先輩がいたのです。また、1888年の磐梯山の大噴火の際には被災したふもとの村で、日本赤十字社が戦地以外では初めて救命活動を行いました。

このように、歴史の中で福島の医療者はフロントランナーとして活躍してきました。未曾有の震災と原子力災害という複合災害を経験した唯一の医科大学で学び、コロナ禍の中、社会に出る皆さんもまた、新しい社会における新しい医療の形を模索するフロントランナーであることを期待されます。難しい要求かもしれませんが、社会の変化は避けて通ることはできません。そうであれば前向きに事に当たるほうが建設的です。何事もそうですが、前向きであることが可能性を広げます。ある日本の科学者の言葉です。「出来るというより出来ないという方が難しい。出来ないと言い切るためには、あらゆる可能性を探し、試さなければならないからだ」。必ずどこかに突破口はあります。ぜひ、新しい社会のニーズに噛み合った新しい医療の形を実現してください。
  今日から始まる皆さんそれぞれの新しいスタートが、将来にわたり実り多いものとなることを祈念し、はなむけの言葉とします。

本日はおめでとうございます。

令和3年 9月30日
公立大学法人福島県立医科大学
理事長兼学長 竹之下 誠一

事務担当 : 教育研修支援課

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