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大学院医学研究科入学式 学長式辞 (令和5年10月2日)

2022年 大学院医学研究科入学式の様子1 2022年 大学院医学研究科入学式の様子2 2022年 大学院医学研究科入学式の様子3

本日ここに、令和5年度後期福島県立医科大学大学院入学式を挙行できますことは、本学にとってこの上ない慶びであります。
ただいま入学を許可された医学研究科博士課程13名の皆さん、ご入学誠におめでとうございます。今日から仲間となる皆さんが互いに切磋琢磨し、将来、揃ってその志を達成できるよう、教職員一同、しっかりサポートしていきたいと思います。

祝辞を述べるにあたり、新入生の皆さんに毎年必ずお伝えしていることがあります。それは、福島県立医科大学が担う使命と、福島で医学を学ぶことの意味についてです。私が本学の学長に就任して以来、毎年入学者に伝えていることであり、本学医学部から進学された方には繰り返しになりますが、これは本学で医療を学ぶ全ての皆さんが意識する必要のあることですから、改めてお話しいたします。

2011年3月11日、福島県は未曾有の地震と津波、さらには原発事故という複合災害を経験しました。本学はいち早く、自らの新たな使命として「健康と医療の面から福島の復興を支える」ことを宣言。以来、大学の総力を挙げてこの宣言の完遂に邁進しています。真似ることのできる前例などない事態に向き合い、行き詰るたびに、悩み、自問自答し、試行錯誤を繰り返してきた12年間でした。そして、皆さんもご存じのように、今年福島には福島国際研究教育機構、いわゆるF-REIが発足。5つの主要な取組みの一つ「原子力災害に関するデータや知見の集積、発信」という分野において、私たちの得た経験と知見をサイエンスに基づいて解析し世界に共有する取組みの主導的な役割を担うところまで本学は進化してきたのです。
皆さんには、震災は12年前の「過去のこと」という意識があるかもしれません。しかし、福島の地にある大学で医学を学ぶ者が、震災、原発事故、その被災者の方々の悲しみ、苦しみ、そして悔しさに対し、無関心であってはなりません。自分自身の中に、この惨禍との接点や課題を見出し、真摯に考え、その知見を世界の共有財産とすること常に意識しなければならないのです。福島に刻まれた歴史に対し、私は知らない、関係ない、という姿勢は許されないこと、福島の復興に常に問題意識を持ち続けることを肝に銘じ、医学のエキスパートとしての学びをスタートさせてください。

さて、本学はこのように過去の例のない複合災害と復興を支えてきた経験を基に「ピンチをチャンスに、変化を進化へ」という指針を掲げてきました。震災から10年以上も経過しながら、いまだにこの指針を掲げているのには訳があります。それは、この指針が、決して災害からの復興のためだけに当てはまるものではなく、普遍的に本学の教育、研究、診療の発展に資するものだからです。
皆さんはこれからの学びや研究の過程で必ず壁にぶつかります。残酷な言い方ですが、これは確実なことです。もし壁にぶつからないという人がいれば、それは何もしていない人でしょう。私たちは何か行動を起こしているから壁に当たるのであって、何もしていない人にピンチは訪れません。その壁を超えるために、私たちはさらに考え、これまでとは違う思考や対策、行動により、そのピンチを切り抜けようとするはずです。すなわち変化です。変化なしにピンチを脱することはできないのです。

そこで皆さんに意識して欲しいのが「レジリエンス」「アライアンス」「アジリティ」の3つのキーワードです。レジリエンスとは、一つの考え、行動、策に固執することなく、常に最適解を求めて検証し、再考を繰り返すしなやかさのこと。そのためには常に広い視野が必要です。
また、大きなピンチに対しては、周囲との関係性を利用し、力を合わせて対応することも必要です。すなわち「アライアンス」です。直面する課題に応じて周囲と連携できる仲間をどれだけ持つことが出来るかが問われます。
そして、身の回りの環境も時々刻々変化をしています。その変化に気づくのが早ければ早いほど、変化は小さく、対処もしやすくなります。そこで求められるのが、機を捉えて迅速に動く力、すなわち「アジリティ」です。常に身の周りの動向に関心を向け機動力を備えておくことです。
この変化への対応力が、私たちに新たなチャンスをもたらしてくれます。そして、変化と対応の蓄積が自らの進化を促すことに繋がるのです。裏返せば、変化に無関心でいることは、自らの進化、もっと言えば社会の進化を止めるということと同じ意味を持ちます。すなわち、私たちの最大のリスクは現状維持にあるのです。「最も強いものが、あるいは最も知的なものが、生き残るわけではない。最も変化に対応できるものが生き残る。」というチャールズ・ダーウィンの言葉を意識し、積極的に変化に向き合う意識をもって大学院での学びと研究のスタートを切ってください。皆さんの活躍を期待しています。

令和5年 10月2日
福島県立医科大学
学長 竹之下 誠一

事務担当 : 教育研修支援課

学生総務係 : 電話 024-547-1972
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