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大学院医学研究科入学式 学長式辞 (令和4年10月3日)

2022年 大学院医学研究科入学式の様子1 2022年 大学院医学研究科入学式の様子2 2022年 大学院医学研究科入学式の様子3

本日ここに、令和4年度後期福島県立医科大学大学院入学式を挙行できますことは、本学にとってこの上ない慶びであります。
 ただいま入学を許可された医学研究科博士課程13名の皆さん、ご入学誠におめでとうございます。今日から仲間となる皆さんが互いに切磋琢磨し、将来、共にその志が成就できるよう、教職員一同、しっかりサポートしていきたいと思います。

祝辞を述べるにあたり、新入生の皆さんに毎年必ずお伝えしていることがあります。それは、福島県立医科大学が担う使命と、福島で医学を学ぶことの意味についてです。本学医学部から進学された方には繰り返しになりますが、これだけは必ず皆さんが理解する必要があることですから、改めてお話しいたします。

2011年3月11日、福島県は未曾有の地震と津波、さらには原発事故という複合災害に見舞われました。本学は、震災後いち早く、自らの新たな使命として「健康と医療の面から福島の復興を支える」ことを宣言。総力を挙げてこの宣言の完遂に邁進してきました。直面した事態には踏襲できる前例もなく、試行錯誤の連続でした。行き詰るたびに、私たちは悩み、自問自答し、試行錯誤を繰り返し、この経験をサイエンスに基づいて解析し、その知見を世界が共有できる未来を今も目指しています。
 あの惨禍から11年が経つ今、皆さんにとっては「よく知らない過去のこと」という意識が強いかもしれません。しかし、福島の地にある大学で医学を学ぶ者が、震災、原発事故、その被災者の方々の悲しみ、苦しみ、そして悔しさに対し、無関心でいることは許されません。自分自身の中に、この惨禍との接点や課題を見出し、真摯に考え、行動することが求められます。福島に刻まれた歴史に対し、私は知らない、関係ない、という姿勢は許されないこと、福島の復興に常に問題意識を持ち続けることを肝に銘じ、医学のエキスパートとしての学びをスタートさせてください。

さて、前例がないという事に関連しては、震災後も数多くの前例のない、予測できないことが起きています。つい最近では、世界の平和と安全の維持に主要な責任を負うはずの国連安全保障理事会常任理事国のひとつであるロシアが自ら、他国を侵攻するという予想もしなかった出来事まで起きました。これから皆さんが極めようとする医学の分野でも、新型コロナウイルス感染症の世界的なパンデミックは言うまでもなく、世界的にはサル痘の蔓延も危惧されています。気候変動による気温の上昇は、これまで日本になかった外来の疾病を引き起こしかねません。日本では世界に先駆けて急速な高齢化が進み、医療だけでなく、社会の機能維持にも影響を及ぼしてきます。
 この2年間のコロナ禍への対応を見ても、社会の高齢化への対応を見ても、単に感染症対策や慢性疾患への対応といった医療に限定した対応だけでは、問題は解決しないという事が明らかになりました。いかに日常の社会活動、経済活動の中に医療対応行動を組み込むかが問題となり、焦点となっています。私たち医療の専門家が社会と乖離してはいられない状況がますます強くなっているという事です。これから医学を極めていく皆さんには、ぜひこのことを心に留め置いていただきたいと思います。先に述べたように、前例のない事態に対しては一朝一夕で答えが得られるわけもなく、私たちは望むと望まないとにかかわらず、愚直に、仮説を立て挑戦と失敗、修正と再挑戦を繰り返すしかありません。そして、医学と社会の関係性が世間の注目を集めている中では、専門性の追求と同時に汎用性、すなわち社会全体の動きにも関心を持つ姿勢が求められます。社会と丁寧に並走できる専門家、エキスパートが求められている時代に、皆さんは博士課程に入学したのだという事を自覚してもらいたいと思います。
 研究であれ社会との連携であれ、決して目的だけは見失わず、より良い答えを導き出すまで耐え抜く力が求められます。そして、それを支えるために優れた教授陣がいます。諦めず、自らのゴールを探求する精神力を日々養い、周りにいるすべてのみなさんと積極的にコミュニケーションを図ってください。

さて、注文ばかりですが、さらに最後にもう一つ意識して欲しいことがあります。それはスピードです。専門性を磨き、汎用的な知識や感覚を身に付けるなど、やらなければならないことは膨大にあります。しかし、それらを、時間を掛けてゆっくりと、とは時代が許してくれません。これらを、スピード感を持って取り組むことが必要です。先に触れた社会の高齢化について、医療や経済など様々な面で問題が指摘されます。しかし、社会の高齢化の最大の問題は、実は意思決定や判断のスピードの鈍化です。時間は有限で、時代は待ってくれません。皆さんが置かれた困難な状況を打破し、新しい何かを生み出し、変化を起こすためには、スピードが欠かせないことを意識し、大学院におけるスタートを切ってください。皆さんの活躍を期待しています。

令和4年10月3日
福島県立医科大学
学長 竹之下 誠一

事務担当 : 教育研修支援課

学生総務係 : 電話 024-547-1972
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