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大学院医学研究科入学式 学長式辞 (令和3年10月1日)

2020年 大学院医学研究科入学式の様子1 2020年 大学院医学研究科入学式の様子2 2020年 大学院医学研究科入学式の様子3

本日ここに、令和3年度後期福島県立医科大学大学院入学式を挙行できますことは、本学にとってこの上ない慶びであります。
 ただいま入学を許可された大学院医学研究科22名の皆さん、ご入学誠におめでとうございます。今日から仲間となる皆さんが互いに切磋琢磨し、将来、共にその志が成就できるよう、教職員一同、しっかりサポートしていきたいと思います。

祝辞を述べるにあたり、新入生の皆さんに毎年必ずお伝えしていることがあります。それは、福島県立医科大学が担う使命と、福島で医学を学ぶことの意味についてです。本学医学部から進学された方には繰り返しになりますが、大切なことなので改めてお話しいたします。

2011年3月11日、福島は未曾有の災害と原発事故という複合災害に見舞われました。福島県立医科大学は、震災後いち早く、自らの新たな使命として「健康と医療の面から福島の復興を支える」ことを宣言。教職員が一丸となり、総力を挙げてこの使命の完遂に邁進してきました。その取組みは見倣うことの出来る前例もなく、試行錯誤の連続でした。時に厳しい批判を受けることもありましたが、その都度、私たちは悩み、自問自答し、県民の皆さんに対し、世界に対し、そして未来に対し、最適な取組みを示すべく考え、行動しようと努めてきました。

福島県立医科大学は、他の大学とは違い、不安を抱える県民を支え、この災害と惨禍に対して最前線に立ち続けることを宿命づけられた大学です。あの惨禍から10年が経つ今、皆さんにとっては「よく知らない過去のこと」という意識が強いかもしれません。しかし、この大学で医学を学ぶ者が、震災、原発事故、その被災者の方々の悲しみ、苦しみ、そして悔しさに対し、無関心でいることは許されません。自分自身の中に、この惨禍との接点や課題を見出し、真摯に考え、行動することが求められます。福島に刻まれた歴史に対し、私は知らない、関係ない、という姿勢は許されないこと、福島の復興に常に問題意識を持ち続けることを肝に銘じ、学びをスタートさせてください。

さて、その福島の歴史について少し触れます。今年は福島県立医科大学の創基となる白河医術講議所が設置されて150年の節目の年です。白河医術講議所は、近代医学による医師の養成を目的として白河仮病院に設置されました。東北でもいち早くこの地で近代医学が教授された背景には戊辰戦争がありました。官軍、幕府軍双方の長崎で西洋医学を学んだ軍医が、敵味方の区別なく戦傷者に医療を施したと伝えられます。彼らは単に医療技術を身に付けていただけではなく、医療が持つ使命、つまり、誰でも分け隔てなく医療を受ける権利を有することを、日本の医療の現場でいち早く示しました。
 さらに、白河医術講議所の後継となった須賀川医学校の卒業生には後藤新平がいました。彼は政府の重職を歴任しますが、その一つに、帝都復興院総裁があります。関東大震災からの復興に尽力し、今の東京の基礎を築きました。この大学には、大災害からの復興を陣頭指揮し、成し遂げた稀有の大先輩がいたのです。また、1888年の磐梯山の大噴火の際には被災したふもとの村で、日本赤十字社が戦地以外では初めて救命活動を行いました。

このように、歴史の中で福島の医療者はフロントランナーとして活躍してきた歴史を持っています。そして今、未曾有の複合災害を経験した唯一の医科大学で学び、コロナ禍の中、医療のプロフェッショナルを目指す皆さんもまた、新しい社会における新しい医療の形を模索するフロントランナーとなることが期待されていることを、今日、心に刻んでもらいたいと思います。

いま世界は新型コロナウイルス感染症への対応に全力を挙げています。その対応は医療面における取組みに留まらず、社会活動、経済活動、文化活動と、日常生活のあらゆることに及び、社会の在り方そのものが変化しようとしています。そして、社会が変化するということは、医療の在り方も変わるということです。安定した医療の提供、着実な医学の進歩は、安定した社会の上に成り立っています。医療活動が根差している社会そのものが、変化しようとしているのですから、医療人である私たちがそのことに無関心でいるわけにはいきません。しかも、この変化は不可逆的、恒久的であり、社会がコロナ以前の姿に戻ることはないでしょう。皆さんには、不可避となった変化を傍観するのではなく、いかにプラスに変えていくかという視点が求められます。

では、このような変化に対し、私たちはどのように向き合っていけばよいのでしょうか。医療人、つまり科学者となる皆さんにとって、変化への対応法は、ひとつです。それは、変化の本質を解明し、新たな仕組みを構築し、進化に変えていくことです。そのためには、多様なチャレンジと深い思考が求められます。変化に対し1回のチャレンジだけで、その本質が見えることはありません。さまざまな角度から切り口を変えて繰り返し変化に向き合い、熟考することで、次第に変化の中にある本質的な何かが削り出されて、科学の進化をもたらすのです。

そして、このチャレンジと思考の繰り返しには、必ず失敗を伴うことも忘れてはなりません。失敗のないチャレンジなどありません。皆さんは、これからの長い学びの過程で、チャレンジのたびに嫌になるほど失敗を繰り返すはずです。しかし、漫然と失敗を繰り返し、失敗に慣れてしまっては、変化の本質を削り出し、進化に変える力にはなりません。大切なことは失敗に対し謙虚に反省し検証ができるかどうかです。今、皆さんが心に持っている志を成就するために、決して答えを求めることを急がないでください。反省と検証ができていれば、単に同じ失敗を繰り返さないだけで、おのずと志は成就されます。

医学という一つの専門領域だけでも変化は日進月歩であり、劇的です。皆さんは、まず基礎を学び、さらにその変化についていくだけで、最初は体力も知力も使い果たすでしょう。それに加えて社会の変化にも着いていけ、というのは酷かもしれません。しかし、社会の変化にリンクしていない専門性は、いくら追求しても、結局は小さく閉ざされた自己満足でしかありません。自らの専門性の追求が、科学の進化、社会の進化にも貢献するよう、広く社会全体の変化も合わせて俯瞰する力も養ってください。

皆さんの周囲を見回してください。このハードな道のりを踏破するための最大かつ最高のパートナーは同期の仲間です。互いに切磋琢磨し、高め合いながら一歩ずつ前に進んでください。

皆さんの健闘を祈ります。

令和3年10月1日
公立大学法人福島県立医科大学
理事長兼学長 竹之下 誠一

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