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「学長からの手紙」番外編 〜 新聞・雑誌への寄稿文から 〜

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2016年6月25日発行 月刊誌「臨床整形外科」 第51巻第6号

「臨床整形外科」(臨整外)は、医療系学術専門誌出版社「医学書院」より発行している、整形外科領域の第一線の臨床的知識を紹介する月刊誌です。医学界および関係領域で活躍するエキスパートを編集委員等に迎え、学術専門誌としてのクオリティと正確さを堅持しています。
菊地臣一本学理事長兼学長は、現在、編集委員として発行に携わっています。

医学書院  http://www.igaku-shoin.co.jp
   (
「臨床整形外科」 紹介ページ) http://www.igaku-shoin.co.jp/mag/rinseige

あとがき

4月下旬の桜が終わり、緑が輝く時季に6月号のあとがきを書いています。
風香る世間では、多くの人々が入れ替わり、悲喜交交(こもごも)の情景が、今年もみられている筈です。

一年に四季があるように人生にも一度きりの四季があります。しかも、人生の四季も、四季と同様に、万人に平等です。
歳を重ねると、一葉の揺らぎに風を視(み)、地平線や山に沈む夕陽に荘厳な音楽を聴きます。
この歳になって、「出会いは人生を豊かにし、別れは人間(ヒト)を成長させる」を益々実感しています。

と同時に、本誌への接し方も変わってきています。以前は斗(たたかう)う為の武器でした。今は楽しみの一つとして手に取ります。

己の学術誌の読み方も随分変わりました。
医師に成り立ての頃は、「何が書いてあるか」に関心がありました。結果の重視です。

経験を重ねるにつれて、「どう書いてあるか」に注目するようになりました。表現への関心です。
それが過ぎると「対象・方法」が気になるようになりました。Study design の重視です。

編集委員としての立場も、歳月とともに変わりました。
最初は、一医療者・研究者としての立場からの視点が強く出ていたように思います。
そしていつしか、教育者としての視点を重視するようになりました。一方、海外誌の副編集長としての立場では、今も、1行の理由だけで「却下」、それで終わりです。

本誌の査読では、弟子の論文を指導するような態度で接しています。
査読の結果に対して、時には、木で鼻を括(くく)ったような返答や、無礼としか言い様(いいよう)のない回答があり、哀しい思いをさせられることもあります。こういう文字通り世間知らずの「田舎者」が居るかと思えば、熱意は溢れているが、きちんとした師匠が居ないゆえの粗い投稿論文も一方にはあります。
どちらも、結果は、同じ「雑な論文」ですが、中味は異なります。師の大切さをここでも感じます。
こんな時、いつかは一人でも良いから、今の私の立場になれば解ってくれると思い、愚直に教育という立場で査読を続けています。

一読者として掲載論文や記事に接する時、今の己の感覚は、「愛読書」です。
日進月歩の医学の発展、一方では、今も昔も少しも変わらない医療現場における医療提供側、患者さん、そして国民との信頼関係があります。これらをバランス良く取り上げた誌面作りが求められている今です。
次代を担う人々には、本誌を面白く感じて読んで戴き(いただき)、自分の腕を磨いて欲しいと願っています。

 

 

 

( ※ Webページ向けに読点や改行位置を編集し、転載しております)

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