菊地臣一 コラム「学長からの手紙 〜医師としてのマナー〜

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188.職場の厳しさを認識せよ

最近、関連病院で医局スタッフが依頼された症例を手術していた際、配偶者が医師という只それだけの理由で誰の許可も得ず入室をして手術を見学に来たという話を聞きました。私はこの話を聞いた時に、入って来た医師の「職場」に対するプロ意識の低さに怒り、また、そのことに対して例え医師であっても、事前に了解を取ることの必要性をきちんと相手に指摘しなかった医局のスタッフにも少しがっかりしました。

最近、似たようなことが大学内でも目にします。某教室では、研究室に子供を連れて勤務をしている研究職員がいます。看護婦さんが子供を連れて病院で勤務が出来るでしょうか。或いは、して良いのでしょうか。われわれも自分の子供を連れて来て、子守をしながら勤務をして良いのでしょうか。出来ないはずです。出来ないからやらないのではなく、してはならないのではないでしょうか。それは、例え、出来る環境であっても、「職場」というものは真剣な仕事場です。真剣な仕事には、すべて他人を排除する要素が付いて回ります。精神力の集中には、他者がいては困るはずです。

職場に第三者を入れる習慣がないのは医療に限りません。どこの職場でも自分達の大切な仕事の場に第三者を入れるでしょうか。そんなことはありません。なんでも公開して良い、或いは医師はどこにでも出入り出来ると錯覚して他者の職場に無断で入り込むこの医師の品性の無さに、他人事ながら腹が立ちます。他人への迷惑も考えずに、真剣勝負の場である職場の厳しさを乱す権利は誰にもないはずです。

 

 

 

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