菊地臣一 コラム「学長からの手紙  〜医師としてのマナー〜

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53.若い人の指導は、先ず自らやってみせる事

今年もまた若い医局員が入って来ました。1年前と同じ様に、スタッフは彼等を手取り足取り指導しなければなりません。その指導する時にいつでも私が注意する事があります。それは、タイトルに示す様に人を教える時は、先ずやってみせる事です。以前にも述べた様に、山本五十六元師が生前述べたと言われている「やってみせて、やらせてみて、褒めてやらねば 人は動かじ」という教えがあります。まさにその通りだと思います。

例えば、レントゲンの計測をしておくようにとスタッフが研修医に言ったとします。しかし、研修医はどこをどう、何で計って、かつその値が正常であるかどうかは判らないのです。また診察しておく様にと言われても、重要なCheck Pointが何であるのかは判らないのです。スタッフにとっては自明の事であっても、新人にはどれが重要でどれが重要でないのかが判らないのです。ですから、教科書をみて全部Checkしたら、一人の患者さんに4時間も5時間も掛かってしまう訳です。こういうのは教育とは言えません。修業とも言えません。やはり能率良くCheckする事は患者さんの為にも、研修医の為にもなるのです。若い人を指導する時一緒に診察をし、やって見せれば、こういう時はこういう道具を使ってこういう所を診るのだという事が一目瞭然です。しかし、それを文字で会得するのは大変困難な事です。

診察上の言葉の使い方もそうです。全く丁寧に教えてもらわなかった医局員は患者さんに「間欠性跛行はありますか」と聞きかねません。これは指導者が悪いのです。懇切丁寧に、スタッフにとっては本当に常識以前の事でも噛み砕いて話してあげれば、良く理解出来ますし、それをきっかけに新人はスタッフに対する尊敬と信頼感を持つでしょう。そうして人と人との繋がりが出来て、医療に対するチームアプローチが可能となるのです。

どんな簡単な事でも最初はやってみせる事です。そして次に一緒についてやらせてみる事です。その上で以前にも医師としてのマナーで述べた様に、自分がその研修医であった時代に、今自分の目の前にいる研修医と同じ様に出来ただろうか否かを考えれば、自ずと今の研修医は優秀だと言う言葉が出る筈です。そしたら、それを素直に口に出して褒めてあげるべきです。自分が研修医であった時代と今とでは既に永い年月が経っております。その永い年月の間に医学は進歩し、自分が必死で覚えた事が今の研修医にとって、それはスタート台になるわけです。ですから、必ず現在の研修医をみる時には自分の時代と比較すると褒めざるを得ません。それが結果的には研修医を褒めて育てる事にも繋がるのです。どうぞスタッフは原点に帰って、若い医局員の指導は先ずやってみせ、次に一緒についてやらせてみて下さい。そしたらその後に必ず褒め言葉が自然と出る筈です。

 

 

 

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