菊地臣一 コラム「学長からの手紙  〜医師としてのマナー〜

<< 前のページ  目次  次のページ >>

25.素直さと頑固さを持て

よく学生や若い医師から良いDr.になるには何が必要かという事をよく聞かれます。正直言って私も判りません。ただ自分の今までの僅かな経験や自分が尊敬している周囲の先生方の生き方をみていると、たった一つだけ共通点がある様に思います。それは、一流と言われるどの人も素直さと頑固さを合わせもっているという事です。一見矛盾している様ですが、その人の中では全く矛盾していません。

具体的に考えてみます。よく年を食ってから医師になった人間は伸びないと言います。ある面では事実かもしれません。それはどうしてかというと、もはや医師として或いは人間としての骨格が出来てしまっている為に、なかなか人の忠告や人の指導を素直に受け入れられない為だと思うのです。素直さが無い訳です。頑固さが勝ち過ぎている訳です。

また非常に順調に伸びている人の特徴をみていると、研修医時代素直に人の意見を聞きます。それは、あたかも吸い取り紙がインクや水を吸い取る様に素直です。しかし、伸びる人はそれだけでは駄目なのです。もう一つ、ひたむきに一つの事、或いは言われた事をやり抜き通す頑固さがもう一つの大事な要素なのです。歴史に残る様な芸術家や科学者は最初から個性的な訳ではないのです。最初は師の徹底した模倣から始まります。それでいつの間にか気が付いたら、自分の個性は出ているのです。それは例外がありませんし、先人達がよく指摘している所です。私もそれは実感します。

個性は意識しなくても一人でに出てくるものです。それは、ひたむきな努力が解決してくれます。ですから、若いDr.にとって最も大切な事は人の指導を素直に受け入れる心を持つ事です。そして一度心に決めたり、或いは人に指導された事は頑固にやり抜く事です。それがいわゆる良い医師の為の必要充分条件だと思います。

 

 

 

▲TOPへ