趣味に救われた
- 准教授
- 佐藤 久志
- さとう ひさし
- 放射線腫瘍学、放射線災害医療学、リスクコミュニケーション学、がん教育
自分が癌に罹患し、治療を受けていた時、“もしかして、このまま死んでしまうかも?”といった思考にとりつかれ、肉体的のみならず精神的にしんどい状態となりました。毎晩ひとり反省会に突入、眠れない夜が続いていました。
この状態から逃げ出したくなり、三つの脱出法を考えましたが、
①“死んで楽になる”は、死ぬことが怖かったので選択できず
②“宗教に入信して、救いを求める”は、40過ぎまで何も信じていなかったので無理
③“趣味に没頭する”は、趣味を持っていなかったので、却下
となりました。
しかし、他に選択肢がなかったので、③“趣味に没頭する”を選び趣味探しに走ったところ、100円ショップに黒い人工革と針・糸のセットがあり、それを眺めていると信じていないはずの神から“車のシフトノブをおしゃれに改造しろ!”と啓示がありました。針に糸を通し、革を縫ってシフトノブにかぶせると、いい感じの作品(写真)となり、私の趣味は“革細工”に決まりました。そこからは、現実逃避のために、眠る時間までひたすら、縫い縫いしていました。すると、反省会の時間を物づくりの時間に変えることができ、少しずつ精神的な状態も改善してきました。その頃から、治療の結果も体調も良い方向に変化し、無事現在に至っています。
病院で癌患者さんとお話をさせていただくと、上記の内容は“癌患者さんのあるある”らしく、“お互いにポンコツですね!”と笑って経験を共有できる様になりました。しんどいときに打ち込める趣味があると、しんどさを感じる時間を減らせる事を経験できたと考えています。みなさんも、しんどいときほど打ち込める趣味を持ってみるのが良いと考えます。
