分析結果を解釈する

私の専門であるパーソナリティ心理学では、主に行動の個人差を統計的に分析することで、「人々の集まり」の理解を目指します。行動の個人差を把握するためには、たとえば、たくさんの調査参加者の方々の行動を測定する必要があります。一人ひとりの調査参加者からデータを得るという手続きを経ることから、パーソナリティの個人差を扱った研究は、データの測定対象となった「特定の個人」への理解を志向する研究と思われがちです。しかし、実際には、こうした研究によって、「特定の個人」についての理解を深めることは困難です。パーソナリティ心理学が一つの学問の分野として確立する以前から、「人々の集まり」を理解することと「特定の個人」を理解することの方法論が異なることは繰り返し指摘されていました。

「人々の集まり」を理解するために行われた調査研究にもとづいて、仮に、「コーヒーをよく飲む人々ほど活発な人々である」という分析結果が提示されたとします。この分析結果は、集団の性質について言及したものとして理解することは可能ですが、特定の個人についての情報、つまり「コーヒーをよく飲む特定の人物が活発であるかどうか」についての情報を与えてくれません。

大学での学習・研究が進むと、医療に関する統計分析の結果を講義や論文で確認する機会がでてくるかと思います。統計分析の結果を確認するときには、まずは行われた調査や実験、統計的手法によって明らかにしうることは何かを確認するとよいでしょう。その上で、分析結果に対する可能な解釈はどのようなものであるのか、あるいは、どのような解釈は許容されないのかに注意して結果を読み解くことが学習・研究のヒントになるかもしれません。

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