頭の中だけで行う実験?

量子力学という学問があります。通常のレベルでは見ることの出来ない非常に小さな世界を解明していく分野です。しかし、幾ら書物を読んでも分かった気になれないモヤモヤが残ってしまう、そんな方が多いようで、かくいう私もその一人です。

光は様々な物理実験の中で“粒子”としても“波”としても振舞います。古典物理学では説明のつかない不思議な問題に直面することとなります。これに対し量子力学では「人が観測するまで有る・無いどちらか分からない」とせず、『有ると無いどちらの状態でもある』というかなり難解な解釈で説明します。粒子と波の二重性であるという結果は視覚的アプローチから得られたものですが、これを紐解いていき一般的に説明させるために置き換えたものが量子力学です。

量子力学の中身は知らないけれど、「シュレーディンガーの猫」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。これは物理学者エルヴィン・シュレーディンガーが提唱した、彼が頭の中だけで行った実験、いわゆる思考実験であり、猫と放射性物質などを使って説明したものです。詳細は割愛しますが、これまでの確率論に対し、箱の中にいる猫の生死は観測した瞬間に決まるのではなく、箱の中の状態は知らないだけで既に決まっているのだとしました。そうではないとする確率的解釈を批判するものでした。

なぜ猫と放射性物質を例に挙げ説明したのか?その理由をこう考えることも出来ます。物質を最小限にまで細かくしていくと素粒子(クォークやレプトン)と呼ばれるこれ以上細かくできないミクロの世界となります。生物も金属も空気も、あらゆる物質は素粒子から成り立っています。命を得たモフモフの猫も、重くて固い重金属も素粒子から出来ています。ミクロの視点では猫も放射性物質も変わりのない同じものから成り立っており、それらの繋ぎ合わせ方や個数が異なるに他ならないのです。シュレーディンガーは猫と放射性物質でその説明を試み、一見全く関係のないものでも視点を変えれば同じものとなり、また確率だけでは説明出来ないことの例えを説いたのでした。この後、ジョン・スチュワート・ベルにより、最初から状態が定まっていた場合と観察した瞬間に定まった場合とでは、結果のばらつき方に違いがあることを数学的に示し、その後アラン・アスペの実験で証明されました。理由はよくわかりませんが…… 現在ではこの量子論を応用した量子コンピュータが開発されています。

皆さんも物理実験だけでなく思考実験を、いえそこまでオーバーなものでなくとも普段から様々に考え整理し説明できる、そのような思考習慣を大学生活の中で養っていって下さい。

シュレーディンガーの猫をテーマにした思考実験のイラスト。猫の顔と箱の中の状態を示す図が描かれている。

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