私の研究、診断・治療薬剤について
- 教授
- 長谷川 功紀
- はせがわ こうき
- 放射性薬剤学、組織化学、タンパク質科学、放射線科学
3回目の寄稿にてネタを思案したところ、まだ自分の研究について詳細な解説していませんでした。今回は少し真面目な話として診断・治療薬剤の話をしたいと思います。
病気の治療に重要なのは診断です。診断を間違えると治る病気も治りません。そこで必要となるのが診断用の薬剤になります。最近では薬の開発が進み、病気の組織に多く現れる分子を標的に集まる薬が開発されています。それを分子標的治療薬と言います。この治療では病気の組織に標的分子があることを確認する必要があります。そこで分子標的治療薬に信号を出すように細工した薬剤を作ります。この用いる信号には2種類あり、①放射線、②色素があります。以下にそれぞれを説明します、図も参考にしてください。
①分子標的薬に放射性同位元素を結合させて体内に投与します。次に放射線を検出する機械で検査することで体内のどこから放射線が出ているのか調べます。出ている場所が病気の組織と同じならその分子標的薬が集まるので効果があることが判ります。そのようにして分子標的薬の効果を診断することができます。
②またがんの集学的治療では外科手術と薬物治療を組み合わせます。まず手術でがんの病巣を取り出し、その後に薬を用いて治療します。その時、取り出したがんを用い、色素を結合させた分子標的薬を反応させます。がんに色素が結合したことが顕微鏡で判れば分子標的薬が効くと診断できます。外科手術で取り切れなかったがんや微小転移したがんを分子標的薬で治療することができます。
さて、上記で診断のための薬剤がどのようなものか分かったと思います。次に治療薬について説明します。①の放射線を分子標的薬に付ける技術を治療に応用することができます。放射線は簡単に言うと診断に使う放射線と治療に使う放射線の2種類があります。診断用は透過性が強い、つまりは体外へ出た放射線を検出することで薬の集まった場所を調べることができます。それに対し治療用の放射線は細胞障害性が強い放射線を用います。それは短い距離しか飛ばない代わりに細胞を壊す作用の強い放射線です。がんの病巣に集まった薬から治療用の放射線ががん細胞に多く照射され、がん細胞が障害されることで治療を行うことができます。
私の研究はこのような診断・治療薬剤の合成や評価法の開発を行っています。化学合成や組織化学などいろんな方法を用いて研究を行っています。学生さんなど多くの人にそのような薬があることに興味を持ってもらえたらと思っています。
図 放射線や色素を用いた診断薬剤について
